読書録

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『死因不明社会』海堂尊 著

死因不明社会―Aiが拓く新しい医療 (ブルーバックス)

死因不明社会―Aiが拓く新しい医療 (ブルーバックス)

チーム・バチスタの栄光」は読みたいと思っているのだが、なかなか見つからない中で、著者の本が地区センターにあったので借りる。ブルーバックスには珍しく、架空の厚生労働省技官・白鳥圭輔氏が、Ai(エーアイ)という直訳は解剖画像、広義には死亡時画像病理診断を用いて、「死亡時医学検索」を行うことが、解剖率2%と低く死因が不明になりがちな中で、きわめて重要だと解説する内容となっている。時風新報桜宮支社の別宮葉子(べっく・ようこ)記者との質疑が、なかなか脱線しつつ工夫されている。論理的にはまさにこの通りで、とりわけ去年の大相撲時津風部屋で起こった力士死亡事件では、一つ間違えば事件が闇に葬られていた可能性もあるだけに、必要性についてはよくわかる。

ただ、残された唯一の課題、費用負担の問題は、著者は国が財政負担をすべきというが、うまく制度設計をしないといけないだろう。

著作では、厚生労働省への強烈な皮肉や批判を盛り込みながら、p267〜最後の言葉に思いが込められている。
「官僚の不作為も適切にとがめなければ、彼らは責任を感じない。物事を考え抜かなければ。市民は国家に食い殺される。防ぐ手立てはただ一つ、自分で考え、物事を調べ、より良くするために行動すること。安穏と怠惰な眠りの中で人生を全うできる幸せな時代は終焉を告げた。無知は罪なのである。医学の原点とは何か、考え直すべき時がきた。官僚は、医療が真摯にそして謙虚に、死者の声に耳を傾けることができる医療制度設計を、土台から構築しなおす大事業に取り掛かるべき時が来たのだ。無知は罪である。そして無知とは、考えようとしない怠惰の中に棲息する」

{地区センターから7/12借り24読了、同日記入}