読書録

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『父親力』/正高信男

父親力―母子密着型子育てからの脱出 (中公新書)

父親力―母子密着型子育てからの脱出 (中公新書)

子どもが社会に出て行くために、「父性」としての父親の役割が大切だと、人間がどう成長するかを解説しながら指摘する。「はじめての記憶」が嫌悪的な体験内容であることや、「死を看取る」ことで死への恐怖が生まれること、ゆとりだけではだめでストレスも必要であることなどが紹介されている。「もうひとりの母親」にならずに、きちっと巣立ちできるよう、手助けをしていかなければならないのだろう。以下、引用。

p5:かつてはスケールの大きな嫌悪的体験を幼児期にアジアうことが、社会性の発達の基点になったのではないかと、私は考えている。
このルーツに気づいたのは、アメリカのガルシアという動物心理学者。
p32〜:記憶が手続き記憶と陳述記憶(エピソード記憶意味記憶)に分かれ、死の恐怖は原体験。怖れの輪郭をつかむよう、成長するなかで媒介するのが、父性の役割。
p61:「なぜ人を殺してはいけないのか」は、言葉でなく、他人から暴力をふるわられたときの自分の気持ちを考え、同じ立場にある他人を想像するsy快適な思いやりの能力で、身体的な把握。
p66:幼少期に脳裏に焼きつくのは、かつては早くして亡くなった子供のことや大往生をとげた祖父母のことが大半だった。
p118:中学生の時期というのは、子供が他者との社会的交渉を開始する年齢・・理屈でなく・・からだに浸透させる役目を担うのが普通は父性・・父親がもう一人の母親の役割を果たすなら父親の影響力が希薄になり、母性の占める比重が一方的に増す・・「耐久消費財化」した子に接するなら「二重母子カプセル」に。
p142:遊びは、自分が100%安全な場所に安住していては成立しない。スリルある体験。
p158:人間が社会に出る以上、周囲とぶつかり自分の思うようにことが運ばない経験をするのは不可避なのである。二とはいつか、どこかで何らかの形の挫折を味わうことになる。温室栽培することは、子供のストレスの耐性を、ますます脆弱なものとする働きを促す。
p160:山田昌弘によれば、パラサイトシングルは 1.不可能と思える夢を追う 2夢が叶えられなかった時のことを考えない という2つの共通した特徴を見出したと報告。
p162:思春期を迎えた最近の子どもがストレスに弱いのは、それまでの発達過程で、適度にストレスにさらされる経験を十分にへてこなかったことが深く関係している。それは社会化を十分に遂げてこなかったことに等しい。他者との折り合いが不可欠。
p166:★挫折にともなってストレスを味わい成長するのが通常、そのなかで主体による自己認識と他者による対他認識としての「私」の把握のすり合わせがなされ、双方が統合されたとき、社会的存在としての人間の自己実現の基盤が整うことになる。ショックを感じる危険をはらみつつも、子どもを外の世界に導き、かつ適度のストレスによって「生の要求」が健全にパワーを発揮できる方向性を与えなくてはいけない。ストレスを克服する中で、人は社会化の次のステップに進むのだ。困難に自力で立ち向かうことができる存在へと発達するために、「同行二人」のような形で、子どもを見守り、必要に応じて手をさしのべ、前方へ踏み出す手助けをしてやるのが、父性の最大の任務だといえるだろう。
p168:母性が子どもにとって安心してくつろげる居場所を提供する役目を果たすのに対し、父性は居場所のと外へ連れ出す仕事を果たさなければならない。

{フォーラムで2/8借り14読了、22記入}