読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

『バカ親って言うな!』 尾木直樹 著

全国の1000を超えるアンケートや聞き取り調査を通して、モンスターペアレントについて考察する。ここまでひどいのかと思いつつ、自分でもそれぐらいは言いかねないなあという話もあったが、「現在の日本が抱える問題点をそのまま体現している社会現象になっている」(p19)という著者の指摘は、その通りかもしれない。

p23〜:困った親たちの5タイプ分類 
1.我が子中心型ー自分の子どもに学芸会の主役をやらせろ、成績を良くしろなど、他の子はいいから自分の子だけを優遇するよう求める
2.ネグレクト(育児放棄)型ー連絡がとれないとか、遠足の弁当を作らない
3.ノーモラル型ー常識と非常識の区別がつかず、容赦ない電話攻撃や、教師から金を借りようとする
4.学校依存型ー毎朝家まで子どもを起こしに来てなど身勝手な要求
5.権利主張型ー義務教育だから給食費を払わない とか 携帯を取り上げたらその日数分の料金を日割り計算で払えなど

p57:近年教育現場に取り入れられるようになった評価主義、成果主義は、現場の教師を苦しめ、教師力を落とす方向に作用している部分もあるのは否めない。

p70〜:モンスター急増の背景←希望の持てない将来を暗示する象徴的な現象p158、日本の危機として解決の英知を集める必要p223
1.学校・教師への信頼や尊敬の念の喪失、不信感の広がり←1979年から大学共通一次試験始り偏差値で人を見る意識で見下すため
2.地域コミュニティの崩壊と格差社会の進行
3.社会的モラルの崩壊 ←p155:崩れた日本社会の信頼・信用、2007年の漢字「偽」
4.弱肉強食的な自己中心主義や誤った権利意識(言ったもの勝ち)を持つ人たちの台頭←p158:勝ち組と負け組
5.現在の親たちが過ごしたバブル期の影響←問題解決能力、問題形成能力、時間管理能力、企画力、責任感に乏しい
6.教育の構造改革による学校の商品化と成果主義(保護者による学校評価制度)の導入
7.過剰サービスとなっているお客様は神様という消費至上主義思想の影響
8.コミュニケーションスキルの低下
9.教員バッシング社会の風潮とストレス社会(精神疾患者の増加)

□アンケート調査(2007年7月〜9月、1500人対象で1247人回答)から
p103〜原因として、1.親の我が子中心主義64.3% 2.自己中心的な親61.4% 3.今日の社会風潮34.5% 4.親の孤立化25.8%
p166〜解決策として、1.相互理解51.6% 2.親を孤立させない34.4% 3.学校の毅然とした対応27.3% 4.教師にゆとりを23.9%

p142:小中学生や高校生が、個人的な恨みで家族や知人を殺傷するような深刻な事件などは、都心部ではほとんど起きていないのが現実で、むしろ地方で多く起きている→テレビやネットでの情報と現実の落差が欲求不満のストレスを生み出す+地方の抑圧感
p216:主役にという親の要望が多く16人の桃太郎が登場する劇を上演した幼稚園、競争種目で手をつないでゴールなど、毅然と対応を。

p227:新自由主義が「教育の商品化」ばかりでなく、日本の心であった相互扶助の精神や他者への優しいまなざし、思いやり、心遣いなどモラルと品格そのものをメルトダウンさせてしまったのです。・・競争と結果責任を取ることを突きつけられれば、誰でも、他者にはかまっていられず、厳しい姿勢で生きるように変化します。
p228:評価と指導に貫かれた競争的教育の戦場から、認め合いと支えあいの「共育」の場へと転換させることです。みんな個性的で創造的であっていいのです。違いが違いとして認められ、学びあい、支えあい、感動を共有しあえる素朴な教室を取り戻すことでしょう。・・換言すれば、「競争社会から協力社会へ転換すること」です。・・協力、共同しながら、みんなが成長でき、幸せになれる「未来型社会」へと舵を切り替えることです。

→このあと著者は『「そんなの甘い。理想だよ」と笑っていられるほど、現実の方こそ甘くないし、のんびり構えていられる余裕もないように思います。』と続けるのだが、やはり、かなり理想論に近い印象も受ける。先の堺屋さんの議論とも似たところがあるが、自由と平等と、どのぐらいの間合いでスタンスをとるのか。いずれにぶれすぎてもいけないような気がする。すべてが構造改革が悪いともいえないと思うし、学校評価制度によって教師に自由がなくなりモンスターを生んでいるという論についても、違和感を感じる。ともに手をとりあって地域が支え、というのが良いのだろうが、これは模索していくしかないのだろう。

{フォーラムから9/7借り17読了、記入は20}