読書録

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『夫と妻のための新・専業主婦論争』

夫と妻のための新・専業主婦論争 (中公新書ラクレ)

夫と妻のための新・専業主婦論争 (中公新書ラクレ)

これまで共働きと子育ての両立で苦労しつつも一定の生活ができているが、この本は6年前にまとめられた論集とはいえ、いまだに論争に決着がついているとは思われず、さまざまな論点を知ることができて考えさせられた。フルタイムの共働きは、今のような経済・社会情勢においては「勝ち組」とする山田昌弘教授は、専業主婦の歴史的役割は終わったとしている一方、多賀幹子さんの英国リポートは、働く女性が増え続けたイギリスで、逆に人間的な生き方を取り戻そうと専業主婦への回帰現象がみられると紹介している。ただ、他の論者も書いているように、年功序列や終身雇用が崩壊しつつある今、片働きだけで豊かな生活ができる家庭というのは、ごく一部の裕福層だけになってしまう可能性はある。マズロー自己実現欲求を満たすためには、はやり、共働きをしながらも、少子化にはならないようきちんとフォローできる体制を築き、大沢真知子さんが指摘するように、男も女も働いて社会を支え、生み出す経済価値が、それを支える税金を上回るようにする必要があるのではないか。もともとこの論争は、よくしらなかったけど、石原里沙さんの「ふざけるな専業主婦」というパソコン通信をもとにした本が契機だったようですね。僕が学生だった80年代には、「シャドーワーク」という家事も労働の一部という概念が一時はやったこともあったように思うけど、よく思い出せない..以下引用。

p3:第一次主婦論争は50年代半ば、第二次はその10年後、第三次は昭和47年のウーマンリブに対する「主婦こそ解放された人間像(武田京子)を契機におこったという。今回は、20世紀末に出た「ふざけるな専業主婦」を発端とした第四次という位置づけ(はしがき)。
山田昌弘)p14:子どもが乳幼児期には子育てと仕事の両立は夫にとっても大変だが、キャリア2人の収入をあわせると相当な金額、無理して会社のために働く必要はないという心の余裕が生まれる。片働きの中年男性はつらい。森永卓郎の三大不良債権、専業主婦、子供の教育負担、住宅ローンの3つで経済的余裕はなくなる。
p16:勝ち組は、いく時期も共働きし続けた夫婦であり、負け組は専業主婦、もしくは低賃金のパートで働く主婦を持つ家族。専業主婦の定義は、「自分の生活水準が夫の収入に連動する存在」
p23:男性は仕事女性は家事育児で一生懸命努力すれば豊かな生活が築けるという夢は、男性労働者の収入が安定し増大し続けるという終身雇用と年功序列賃金が維持される条件のもとで希望になる。
p28:共働きのライフスタイルの変換が社会政策の課題だが、男女とも残業などせず、そこそこの収入を得ながら働くというスタイルが利そうとして求められる。
大沢真知子)p54:子供も仕事も選びたい女性が増え、出生率低下の原因は外で働く女性が増えたのに育児を容易にする施設や制度がないからと答える。結婚は、雇用保障の揺らいだ今こそ、夫婦や家族が何かあったときに頼れるもっとも重要な存在になってきている。総理府世論調査でも、今後したい生活の第一位は、「家族と団らんできる生活」に。仕事だけに重点をおかれている現在の生活から解放されたいと思っている男性も増えてきている。
p58:人間資本が育児や介護のため経済社会に十分貢献できないとしたら損失になる。男も女もはたらき、日本の社会を支える。それによって生み出される経済価値がそのために支出される税金をはるかに上回る。そういう時代がきたのである。福祉政策にも雇用政策同様、新しいパラダイムへの転換が求められている。
石原里沙)p68:専業主婦の生活が家畜の生活ににていると思う。自分の食いぶちも自分で稼ぐことをせず、家事に必要以上に時間をかけて、家事を趣味として楽しんでいる専業主婦・・夫の出世や子供に夢をたくす・・・。
浜田敬子)p89:アエラで、あえて専業主婦を選択し今幸せという女性を取材。日々の暮らしはなかった、p91:保育園の参観日や行事など、本来親子にとって楽しいはずの育児イベントも「乗り越えるべき」課題になっていた。←●同感というかこうこの感じわかる●
p93:主婦という贅沢品、一方、子育てをしながら働くことも恵まれた特権階級では、実家の応援がないとだめ。
p94:専業主婦バッシングの背景は、働きながら子供を育てなおかつ生活や家族を大切にする困難さがそれを加速。
p95:専業主婦願望の背景には、長時間労働を強いられるいまの労働環境がある。毎日疲れきって帰ってくる夫に家事や育児をとてもたのめない。←●うちではこんな感じにはならず、だから折半というか完全分担となった●
岡田尚子)p115:主婦アンケートでは、専業主婦は重要な仕事であり、総じていまの自分に満足しているという結果が得られた。大半の人は、「もう少し自由になるお金と時間があれば」と思いながらも、やりがいと誇りを感じている。
上村くにこ)p127:人間最高の仕事である子育てに専念することを選択できるうらやましい女性と、主婦しかできない軽蔑される主婦と・・これは幸福への進化とよべない。個性をみがき社会に進出せよといわれ、同時に子どもがきれない食事を作れと言われる。男女ともに、自分のライフサイクルに合わせて、生き方と役割を変える柔軟さを許す社会ができたら、どんなに幸福だろうか。
海原純子)p132:専業主婦の悩みは、マズロー説にあてはめると、「自己実現欲求」が満たされない悩み。男性の悩みのほとんどが、所属欲求と承認欲求どまり。・・女性が葛藤を引き起こすのは、「自分らしさ」と「女らしさ」が相反する時。
p138:男女ともに自分らしさを生かすことができる環境をつくることがすべての前提。男は仕事女は家庭、女はかわいらしく愛らしくという心理的な鎖をはずしていくことが求められる。・・かつては育児や家事は大切な役割として社会から承認されていたが、今はやってあたりまえとして評価も低い。
多賀幹子)p144:イギリスで専業主婦が復活していることは間違いない。p148:1950年代は90%が専業主婦で、昨今は30%以下。p153:仕事と家庭の両立に奮闘する母親をみて、「いつも疲れきっている」と専業主婦志向を見せた。
横森理香)p174:世知辛い世の中、信用できる人が年々少なくなっていくなかで、自分の絶対的な味方であり、なんでも話せる親友であり。心と体をあっためあえる相手を確保する、それが結婚というものだと私は思う。・・専業主婦である以上、フィフティフィフティの関係は望めない。すべての欲求不満は、自分で自分をくわすことができないふがいなさというか自由のなさが、精神を腐らせる。
林望)p212:子供を迎えに帰るなど日本で言ったら総スカン。家事を遂行していくことに対する寛容がない

{フォーラムから2/8借り16読了、記入は23}