読書録

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ぐれる!/中島義道

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この著者の本は「不幸論」を読んだことがあるが、ここまで徹底するとすざましさを感じ、なるほどという部分もある。ある意味で、諸富祥彦さんと対極にあるが、これも生きにくい現代にあって、ひとつの考え方なのだろう。

p34:幸せそうなアホ面をぶら下げた奴には、張り倒したいほどの嫌悪を覚える。生きていても何もおもしろいことはない。すなおな心がもうすっかり枯渇しているのです。ひとの喜ぶことがいちいち癪にさわる。ひとが悲しんでいても、苦しんでいても、ほとんど何の共感も覚えない。ただただ退屈なだけである。
p53:ぐれるとは、「よくなる」ことをあきらめる態度なのです。わずかにでも「よくなる」ことを期待しないところから芽生える態度なのです。・・・油断すると「よくなる」ことに傾いてしまう。じつは、ぐれることはたいそう難しい。だからこそ全力を注ぐだけの価値がある。
p90:男の子の性欲は、女の子のそれに比べると圧倒的に暴力的なものであることを認める必要がある。・・・この社会の残酷さは、もともと暴力を不発弾のように抱えている男の子が「暴力禁止」という劣悪な条件のもとに生きていかなければならないことです。・・・勝ち組にとってはなかなか居心地のいい社会であり、負け組にとっては徹底的に住みにくい社会です。
p98:あなたは駄目人間なんです。それはもう一生変わらないんです。・・・それが真実なんだからしかたない。それをいさぎよく認めて、あきらめて生きるしかないのです。・・・このすべてにあなたに責任はない。・・・すべてはなんとなんと理不尽なことでしょう。そしてあんんと心がすっきりすることでしょう。・・・世の中で言われているきれいごとをきっぱりはねのけて、自分の無能力を、自分の魅力のなさを、自分の育ちの悪さを、最大の武器にして生きることにしましょう。・・・あなたは不幸になるのです。それを恐れてはいけません。こうした不幸には一日も慣れることが大切です。
p141:「温かいかていこそ心の拠りどころ」「家族っていいね、やっぱり家族だね」という奴らを平手打ちにしましょう。彼らは傲慢で鈍感だからです。現代日本では「東大出こそ心の拠りどころ」とか「やっぱり五体満足がいいね」と言っていけないことを知りながら、ぬけぬけと自分たちはそう語るから。・・・彼らが自分たちの主張はつつましく自然であって、すべての人が実は望んでおり、それがかなえられないのは努力が足りないからだという偏見丸出しの図式を描いて、その図式の上にあぐらをかいているからです。
p157:ぐれる理由1)もうじき、どうせ死んでしまうこと、2)ひとは不平等に生まれついていること、3)人は偶然に翻弄されること、4)それにもかかわらず、「明るい顔」をすることが要求されること、5)犯罪をなくして社会から葬り去られるだけの勇気はないこと。
ぐれない人が多い理由1)世の中が間違っていると怒りに燃えている人、2)現に犯罪を実行してしまった人、3)家族から国家まで自分が属していいる組織に自己投影できる人、4)世俗的欲望が希薄で社会の片隅で生きることに満足している人、はぐれない。
p186:「失敗したほうがいい」「そのままの自分でいい」という嘘の大合唱。こんなの全部ウソ八百です。・・・自分には「人間的魅力」があるなどとほざくのはやめましょう。みんな真実を見ていさぎよく絶望しましょう。それが正しくぐれるということ。


{図書館で6/1借り6/8読了}