読書録

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『そして、バトンは渡された』 瀬尾 まいこ 著

  『麦の唄』や『糸』など、中島みゆきさんの歌を思い起こしながら、とても優しい気持ちになれる一冊。さすが、2019年本屋大賞の受賞作。

そして、バトンは渡された (文春文庫)

そして、バトンは渡された (文春文庫)

 

  発刊した文藝春秋社のサイト↓に、上白石 萌音 (女優・歌手)さんの書評リンクあり

books.bunshun.jp

 文庫版の巻末に掲載されているこの書評が的を射ていて素晴しく、以下に一部引用↓

p422:『主人公の優子は、十七年の人生の中で、七回も家族の形態が変わっている。これだけ聞くと彼女の数奇な運命を想像してしまうが、この物語は「困った。全然不幸ではないのだ。」という言葉で幕を開ける』

p423:『本作の中で、とても好きな言葉がある。梨花さんが幼い優子に、ニコニコしていたらラッキーなことが訪れるよ、と教えたあとで、こう付け加えるのだ。「楽しいときは思いっきり、しんどいときもそれなりに笑っておかなきゃ」』

 自分も最初に残しておきたい言葉としてメモしたのが、このあとの部分で、

p68:できるだけ笑っていよう。誰にでもにこにこしよう。私はそう心に決めた・・(中略)・・笑っていないとだめなことが、いつかやってくる。

 という部分だった。優子さんの家族環境の変化を、自分は読みながら、4回転校した小学生の時代、中高の甘酸っぱい思い出などを重ねながらも読んだ。

  最後のお父さん・森宮壮介(そうすけ・とフルネームでルビが出てくるのは、p287とずっとあとだったのもなぜかメモしたくなった)さんが、餃子をはじめたくさん料理を作ったり、中島みゆきの歌を紹介したりと、楽しい。p249に、合唱祭で歌ったという『糸』が歌詞とともに紹介されているほか、p251に、新しい曲として、『麦の唄』をピアノで弾いてと優子さんに頼むのだが、朝ドラの主題歌になっていたのに、見ていないので知らないという・・・さらに『時代』を歌う、というのは、なんとも感慨深い。

 最初に村上春樹さんの本に接したときに、音楽がさまざま登場していたのと同じような印象も持った。今回登場した音楽で、どうもメロディが思い浮かばないので、どこかで聴きたいとメモしておくのが以下。

合唱祭課題曲 p182:『ひとつの朝』、p187:『虹』、p188:『大地讃頌

p356:アンドレイ・ギャニオン の『めぐり逢い』 早瀬君が泉ヶ原さんに弾いた曲

p383:『羊は安らかに草を食み』 早瀬君が梨花さんの病院ロビーで演奏 

 『麦の唄』は、p411で、早瀬君が森宮さんに送ったCDの中の一曲として再登場して、優子さんは初めて耳にする。どんな歌かと聞かれ、森宮さんは、「大事な故郷から旅立って、新たな人生を歩んでいく」みたいな歌だったかな」と答え、優子さんが「牧歌的な感じがする」と感想を述べるのだが、この曲は、『マッサン』で流れ、映像も馬が走るシーンがあったり、いろいろ思い出があって懐かしい。

www.nhk.or.jp

 最後に、一番心に留めておきたいのは、森宮さんの次の言葉でこれを引用する。

p407:「何度も言うけど、俺、本当にラッキーだったよ。優子ちゃんがやってきて、自分じゃない誰かのために毎日を費やすのって、こんなに意味をもたらしてくれるものなんだって知った」

 

 とても素敵な本に出逢えて、幸せを感じることができました。

 

{2021/3/13-20読了、記入は3/21(日)}