読書録

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峠うどん物語 講談社文庫 し61-20

峠うどん物語 下 (講談社文庫)

峠うどん物語 下 (講談社文庫)

 文庫の下巻も、感動しました。

 あとがきには、『小説現代』2006年1月から2011年11月まで5年半かけて書き継いだ連作で、これが初めてで今後もないと著者が紹介。
 「場所の持つ磁力にゆだねて、尾0話を書いてみよう(中略)舞台は、斎場のすぐ近くにあるうどん屋ー書き出す前に決めていたのは、それだけだったp254」というこの作品、著者はいまでも“あのうどん屋”大好きだと、モデルがあったことを示唆しているが、それこそ”柿の葉うどん”のように、ひっそりとさせておきたいということか…。
 いろいろ検索してみたけど、わかりませんでした。

 人の生と死、それをどうとらえ、また生きていくか。第十章の、おばあちゃん「どこかにつながるところがある」という言葉が心に響く。この章では、高校入試で中学の同級生が受験を苦に自殺する話がでてくるが、この3月という季節には、高校の同級生が合格後に自殺したことを思い起こす。とても優秀で、Z会全国模試ではトップ10に入りながらも、文化祭などクラスの活動にも参加し、いまだに“なぜ”死を選んだのか…。また2001年3月1日に40歳で亡くなった大学の同級生は、女性キャスターとして知られるようになり、「もっと仕事がしたかった」と話したということも思い起こしながら、さまざまなつながりの中で、生きていくことを考えたい。

 
発刊した講談社BOOK倶楽部のサイト⇒ http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062779470


◇印象に残ったフレーズをいくつか以下に引用。忘れやすくなり内容を思い出すきっかけとして…ネタバレあります。
第六章 柿八年(水害でふるまわれた柿の葉うどんの思い出を投稿した千恵さん)
p59:柿八年の気持ちで明日からの復興をあせらず、あきらめず、お互いにがんばりましようね、という気持ちもこもっていたんだと勝手に決めさせてもらった。

第七章 本年も又、喪中につき(町医者の榎本さん、患者が亡くなると喪中に・・妻が重い病になり)
p100:「指図じゃない。あたりまえの礼儀や常識を言っているだけだ」
「ですから…医者っていうのは…」
「その前に人間だ」

第八章 わびすけ(ヤクザの組長だが、シュウちゃん=修吉、コマちゃん=駒子と呼べる仲で、御予約席の看板)

第九章 立春大吉(柿の葉うどんをメニューにした『みやま亭』の商売優先で凍結路面でバス、千恵さん怪談)

第十章 アメイジング・グレイス(わびすけの通夜に流すため+よく知らない同級生の葬儀で)
p239:祖父「お通夜でも告別式でも、自分の居場所がわからない参列者っていうのが、いるんだ」
p246:祖母「こういうときはね、亡くなったひとのことを考えるよりも、のこされたご家族のことを考えたほうがいいの。特に、今夜なんか、あんなふうな亡くなり方だったわけだから、工藤さんっていう子のお父さんやお母さんはどんなにつらいだろう、って…そういう創造ならできるでしょ?」
p247:祖母「それでいいの。生きている者同士、どこかにつながるところがあるんだから」


{2017/02/25-3/3読了、記入は4}