読書録

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書店ガール2 最強のふたり

書店ガール 2 最強のふたり (PHP文芸文庫)

書店ガール 2 最強のふたり (PHP文芸文庫)

続編も期待にたがわず、とても面白かった。吉祥寺で地元の書店や他業種ともコラボして開いたイベントで、『五十年後にも残したい本』のフェアに出展される数々は、読んだり読んでいなかったりではあるけど、それこそ参考書リストのようにもなっている。

出版したPHPの関連サイト⇒ http://www.php.co.jp/shotengirl/

 続編では、出産を控えた書店員と出版社勤務の夫とのやりとりが、三歳児神話などもからめて子育てをめぐる論議を思い起こしつつ、お互いにいたわりながらやりたいことをやるというハッピーな展開にはほっとするし、思わず涙がこぼれるところがあった。『働く母親たちが危ない』という本がこの関連で出てくるが、検索するとこれも実在する話題になった本のようだった。

 女性活躍社会と言われる中で、p124に、子育てしている母親を受け入れることができないゆとりのない職場にはしたくないと主人公の店長が夫側に説明したうえで、「効率だけが優先される職場は楽しくないし、やり甲斐もない。愛着も持てない。そういう店ではみんなも必要以上の仕事はしないし、チームワークも育たない。それはお客様にも伝わるし、結果的には売り上げも上がらないのです」というのは、どの職種でも当てはまると思う。

 本著で紹介されていた中で懐かしい本として登場していたのは、石川達三の『僕たちの失敗』。記憶の片隅では、この著者の本を十代のころに結構読んだ記憶はあるのだが、内容を思い出せないので、久しぶりに手に取ってみたいとも思う。また、谷川俊太郎の詩『みみをすます』が、印象深く紹介されていたp302ので、原本を読んでみたい。

 南京大虐殺をめぐる内容で回収さわぎと執筆者がネットに投稿して議論になり、書店側でこの本を並べるかどうか、といったストーリーは、2015年10月に、渋谷のジュンク堂書店で民主主義コーナーをめぐって、店員のツイートもあって撤去することになったことを思い出す。本著は2013年に出ているので、時代を先取りしたということか・・・

 心に残ったフレーズとして、p69「…その本に会うことでこころが慰められたり、人生が変わったりすることだってあるのだ。お客がその一冊に出合うための手助けを、我々書店員はしているのだ。そう思わなければ、こんな仕事、やってられない」、p324「本を売る喜びに目覚めた人間は、たやすくそれを忘れることはできないのだから」。また、p180の旅先の一箱古本市で子どもが編集の人に初めて会ったと握手を求めてくるストーリーは、見失っていた大事な何かを取り戻す場面で、心がほっこりする。

 ラストに近いところで、妻のいる福岡に戻ることを決めた男性の書いたPOPが、あとで店長が知ることになるという設定と、その本、フロムの『愛するということ』に書かれた文言「…でも、愛した記憶は消えない。たとえ目の前にいなくても、心から愛した相手との思い出は自分を高め、これからの一生を照らしてくれる。そんなことをこの本は教えてくれるのです』も、胸をうつ。

 特集サイトを見ると、3と4の続編もあるようで、楽しみがあると思うと、率直に嬉しい。
 
(4/22_23読了、記入は29)