読書録

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 しあわせのねだん

しあわせのねだん (新潮文庫)

しあわせのねだん (新潮文庫)

ねぎソバの390円から冷蔵庫の13万6000円まで、日常の食事や買い物など、お金の遣い方と、その時の状況や思いが淡々とつづられている。先に読んだ『さがしもの』でもそうだったが、何気ない軽妙な語り口の中にも、いろいろ考えさせてくれ、さて、どんなお金の使い方が幸せなのだろうかと、ふと立ち止まる。

著者は財布にはほとんどお金を入れていなくて、食事も定食屋のようなところが多いようだと思って読んでいると、突然59000円の鞄を買ったり、クリスマスのブレスレットに35000円、嫌いだけど好きになるための松茸に4800円など、遣い方の変動が激しい。情緒不安定なころに30数万円のソファーを衝動買いしたことを記して、「自分には分不相応なお金を衝動的に使うことで、あのとき、私は自分の気持ちのバランスを保とうとしていたんだなあと思う」(p187)と振り返り、「お金と心はときとして、体と心のごとく関係しあう」という思いに至る。

著者はまた、20代のころに安居酒屋で友人と語らいあいながら飲んでいたことが、今の自分の足場にあるといい、それだけお金を使ったことが役立ったと考える。貯金があると自慢していた人には中身が何もなかったと厳しく、「まずしいまま年齢を重ねることが、私はとてもおそろしい」(p178)と結論づける。

この本のラストでは、豚肉100グラム110円より150円のほうがおいしいからそちらを買い、ティッシュは50円安いドラックストアで買う、と書いていたが、我が家では、豚肉は59円〜69円ぐらいを標準とし、100グラム100円以上の肉は財務大臣がまず許可してくれない。まあ、おいしければいいとは思うのだが、もう少し豊かな食生活を心掛けたいとは思うのだが。

{3/29-30読了、記入は4/2}