読書録

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リクルート事件・江副浩正の真実

リクルート事件・江副浩正の真実 (中公新書ラクレ)

リクルート事件・江副浩正の真実 (中公新書ラクレ)

厚生労働省村木厚子元局長の無罪判決のあと、大阪地検特捜部が押収したFDをめぐる証拠隠滅事件の報道が連日続いているが、強引な調書の取り方、証拠の扱い方など、驚くばかりだ。しかし、今回明らかになりつつある検察の実態を垣間見ると、本著に書かれた江副元会長側から見たリクルート事件というのが、判決は有罪で確定しているものの、かなり真実が描かれているという印象を受けた。


本著では、過熱する報道にあわせて検察が動き出し、立件するための都合の良い調書が作成される。いくら否定しても保釈をほのめかされたり、壁に向かって立たされ怒鳴られるというような脅迫的な取調べを受けて署名してしまうと、それが元になって、一審(他のルート)では無罪でも結局は有罪判決が下ったという流れだが、かつて大騒ぎしていた事件が、こういう経緯を辿ったのかと、感慨深いものがあった。「見返りを期待しない政治献金はない」という一般常識がなく(p94)、未公開株を大勢に渡したり政治資金で支援したりしていたことは批判されるとして、事件にするためにここまでのことが許されるのかどうか、呼んでいて疑問を感じるようになった。ネゴを勧める宗像主任検事や土下座させた神垣検事や、庄地検事など、こうした強引な調べの手法も結果が良かったとして評価されてきたことが、今回の事件にもつながっているのではないかとも思えた。


江副元会長は、悔しい気持ちをにじませながらも、あとがきには、厳しい取り調べをする検事にも職務意識の現れと理解を示しつつ、「問題は、取調べが密室で行われていて、取調状況のすべてが可視化されず検察官調書に重きが置かれる現行の司法制度にあると私は思っている」と淡々と書いているところが、逆にこの本の信ぴょう性を増しているようにも思う。


13年3ヶ月にわたった江副元会長のリクルート裁判、今回の事件にあわせて、しっかりと検証した方が良いような気がする。


(引用)
p120:(神垣)検事は突然机を叩き、大声を上げた。「特捜の捜査がどんなものか見せてやる!捜査を長引かせているのはおまえだ」

p129:カンカン踊り:丸裸で四つん這いになり肛門にガラスの棒を突っ込まれる←「憚りながら」にも描写されていた人権侵害的な行為

p138:相田みつをの『人間だもの』の差し入れ「つまづいたおかげで」に心に響く「つまづいたりころんだりしたおかげで
物事を深くかんがえるようになりました あやまちや失敗をくり返したおかげで少しずつだが人のやることを暖かい目で見られるようになりました・・」

p157:『刑事裁判の光と陰』芸大バイオリン事件「壁に向かってながいこと立たされた」「大声で怒鳴られたり、人格を侮辱する発言を受けた「椅子を突然、足で蹴りつけられ、椅子から床に落ちて尻餅をつかされた」など、取調べの様子が事細かに書かれている。←本人も経験

p188:(神垣検事)「お前は真藤に直接電話している。忘れているだけだ。思い出したか・・思い出したら席につくことを許す」

p196:(何年もいると心身ともに参ってしまうケースがあり)私は調書に署名して早期保釈を受け、裁判で争う道を選ぶことに決めた。

p216:(庄地検事)「(趣旨が弱いと上司に怒られ)『これに署名したら早期保釈をする、署名しなければ長期勾留する、と伝えて署名をとるように』と言われた。よく考えてどちらか選べ」(事件の打ち上げに間に合わないといけないから)「頼む、署名してくれないか」

p226:宗像検事「毎晩新聞記者が僕の官舎に来て、加藤はいつか、中曽根はやれるのかと聞くんだよ。本件には検察庁の威信がかかっている」・・「政治家の件では君は逮捕しない・・僕が作る調書に署名してくれれば、軽い求刑にして、早期に保釈する。求刑は起訴時に検察が決めるんだよ。悪いようにはしないことを約束する」

p252:宗像検事「中曽根をあげるのは検察首脳会議の決定だ。臨教審でなくてもいい。何かありませんかね」

p259:宗像検事「池田から謝礼の言葉を言われたことにし、藤波には徳田英治ではなくて君が直接電話をかけたことにする。その代わり中曽根は外す。この三点セットでどうだ」「藤波,池田、中曽根のイニシャルをとってFIN。この三点セットに応じてもらって、リクルート事件の捜査をFINにしたいんですよ」

p265:検察は事実を知りながらこれを隠し、私が「昭和59年3月の『請託』を契機として昭和59年8月上旬から政治献金名目で賄賂の供与を始めた」という虚偽の筋書きを作り上げたのである。(以前の献金を外したのは賄賂性がなくなるから)「検事によって罪は作られる」との思いを新たにした。

p305:リゲインCMソングの替え歌「ひまわりバッチは正義のしるし 24時間働けますか 弁護団 弁護団 ぼくらの弁護団

p317:初公判で江副元会長の意見書陳述『虚偽の供述調書を取られる』などとは考えられないことと思っておられましょう・・『いずれが真実であるか明らかにされる』と信じております。・・『いつの日か、真実は必ず顕れる』と信じ、裁判所の慎重な審理と公正な判断を求めて参りたいと、切に願っております。

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