読書録

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検察が危ない

検察が危ない (ベスト新書)

検察が危ない (ベスト新書)

著者は、大阪地検特捜部による証拠改ざん事件を受けて設けられた、検察の在り方検討会議のメンバーに就任した。
この本は、今年4月の出版だが、今回の事件は、先に読んだリクルート元会長の著作や、キャッツ事件の細野祐二公認会計士(『公認会計士VS特捜検察』)にもあるように、十分予見されるような検察の体質に基づくものだったのかも知れない。著者は特捜部経験者であるだけに、書いてある一言一言が事実であるだろうし、重い課題を背負っていると言える。

また、p122で紹介されるように、特捜の勤務は人間の生活ではないともいうぐらい、過酷な勤務のようだ。休日がなく朝から晩まで待機するだけということもあるらしい。「どんな人間でも思考停止にしてしまう」というのではどうにもならない。正義感・使命感のある人たちで、もともとは悪意はないのだろうから、組織風土を変えていく必要もあるのだろう。


p96:(1993年のゼネコン汚職静岡地検浜松支部の金沢仁検事が仙台地検の検察官室で参考人宮城県幹部に暴行を加えてケガをさせた事件の頃)検事が取り調べの際に怒声、罵声を浴びせ、ときには暴行を働いてまで供述証書を取ろうとする根本的な原因は、固定化されたストーリーに沿った供述調書を作成し、署名させることだけを目指す取り調べのべの在り方にあることは明らかだった。


p111:最大の問題は、この事件の捜査では、主題であったゼネコンと政治家の関係の根本にあった「公共調達をめぐる談合構造」そのおのの解明が行われなかったことだ。


p137:特捜検察では筋書きの転換がなかなかできない。・・(中略)・・このようなストーリーの単純化・固定化のために、真実と異なった筋書きに固執することになる。


p144:上村氏の証言通りだとすると、検察官の言う通り自白をしたから、早く保釈で出してもらえるのであり、「人質司法」によって冤罪がつくられる仕組みそのものである。身柄拘束長期化のプレッシャーというのが、検察官の意に沿う供述を行わせる動機になっているということである。


p159:2009年から約一年間の東京地検特捜部をめぐる検察の動きは、「犯罪の捜査」「公訴の提起」の判断、「裁判の執行の監督」(公判活動)のいずれもが最低レベルである。レベルの低い検察としての活動や判断が、マスコミの「翼賛報道」によって社会に容認されることで、レベルの低下がさらに進むという悪循環が続いている。まさに、検察の「暴走」と「劣化」の繰り返しである。


著者は最後に、危機的な状況が大きな変化・飛躍へのチャンスだとして、窮地を乗り越えるよう希望しているが、まさに当事者になった訳だから、信頼回復に向け、ご活躍を期待したい。

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