読書録

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『就活のバカヤロー』 石渡嶺司 大沢仁 共著

就活のバカヤロー (光文社新書)

就活のバカヤロー (光文社新書)

副題や扉にもある通り、就職活動が、企業・大学・学生が演じる大いなる茶番劇と化しているという問題意識は、その通りなのだろうが、なかなか解決が難しい問題だ。最後に(p270)『「就活」とは、企業と社会の未来を作る行為である、なにより、学生個々人が未来に向けて大きな一歩を踏み出す行為である。その就活が、単なる茶番に成り下がっていて、そこで皆が悩み、苦しんでいるというのは悲しい事態なのではないだろうか」として、問題提起にとどまっているが、仕方のないことなのかもしれない。

自分のことを振り返れば、1980年代は、大学4年の梅雨のころからいろいろ動きがあったものの、協定はあって11月1日以降が正式な内定で、これを守る企業もあった。本著作によると、就職協定は1996年に廃止されて早期化が進む一方、2004年度に倫理憲章が発表されて歯止めをかけようという試みも行われているという。

子どもが高校受験期を迎えて、将来何をしたいか考えて高校を選んだらと言いながら、面接試験に備えて、そこで何をしたいのか、自分は何をしてきたのか、きちっと考えておくことが大切だよ、と子どもに伝えるとき、背景にあるのは、この本でも紹介されているような自己分析・・本著作では不要論も展開されるが・・そして、学歴というのが必要だという意識があるのかもしれない。
子どもから同級生が内申書の点数を上げるためか、人望もないのに生徒会に立候補した子がいたなどと聞くと、なんとも悲しくなる。かといって何もそういうことをやってこなかったことを今更言っても仕方ないし・・・

理想と現実、どう生きていくのか、何をしたいのか、子どもを見守るしかないのだろうけど、本当に難しい時代である。


(目次ー引用)
第1章 就活生はイタすぎる
(「こんな漢字も書けないのか」;学生の「自己分析」はイタすぎる ・・);
p31:自己分析、自分探しで小さな自分に気づいて落ち込んでしまったり、記号に入るための下心満載の嘘くさい自分をもっともらしく演じている時間があったら、「未来の自分」を大きく構想してもらいたい。
(珍しいポイントがないと落ち込んだり、キャッチフレーズを使ったり、納豆のように粘り強いなんて何度も聞かされる。資格もあまり意味がないし、かえってコミュニケーション能力が低かったり人間として弱い面や深みがないなどと感じ取られる。好きといってもその理由を聞きたいのにわからない)


第2章 大学にとって「就活はいい迷惑」
(現在の大学が抱える「ジレンマ」;徹底支援、熱血支援と言うけれど… ・・);
p104:就職に関しても大企業に入れるのはせいぜい日東駒専クラスまでた。(日本・東洋・駒沢・専修)


第3章 企業の「採活」真相はこうだ
(新卒採用担当者のお仕事;企業の採用戦略はこうやって決まる ・・);
p193:採用サイト・パンフレットには「ホンネ」と書いてあっても、99%はウソであり、多くの学生が騙されます。


第4章 インターンなんてやりたくない
(いつの間にか就活の一部となった「インターンシップ」;企業の本音は「やらざるをえない」 ・・);
p321:インターンシップを日本の現状に沿って意訳すると、「企業説明会」もしくは「アルバイト」です。


第5章 マッチポンプで儲ける就職情報会社
(就職情報会社の顔ぶれ;就活、採活を牛耳る「陰の支配者」 ・・)
p250:人気企業や大企業の各社は、ナビサイトでの募集の受付などを行わず、自社の採用ホームページを強化している。


おわりに
p264:自分を偽り、マニュアル通りのやり方をしてしまうイタい学生と、結局、その学生を、表面的な「コミュニケーション能力」や「学歴」などで「優秀な学生」と判断してしまうイタい企業。
p266:「仕事を楽しまなければならない、自己実現しなければならないという、一見美しそうな概念自体が、学生や若手社員をくるしませているのではないでしょうか」・・まずは自立のために働いてみるというシンプルな原点への回帰が、逆に学生の賛同を得ることになるのかもしれない。


{図書館から借り10/7読了、記入は11}