読書録

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『2011年新聞・テレビ崩壊』 佐々木俊尚 著

2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)

2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)

アメリカでは2005年からテレビの広告費が急減しはじめてネットへシフトし、2008年には多くの新聞社が倒れ始めたが、これが日本でも2008年から始まり、2011年には完全デジタル化と情報通信法の施行により、劇的な業界構造転換の波へさらわれるという。
確かに、実生活で、新聞はネットで見ることが可能になり、テレビ欄と広告までもが、リクルートが宅配してくるもので間に合うようになってしまった以上、積極的に新聞を宅配でとる必要はなくなってきた。テレビもHDDに録画しておいて映画や音楽などを鑑賞することが多く、唯一、ニュースなどをリアルタイムで見るような状況だ。

こうしたメディアの行く末を、著者は、グーグルの及川卓也氏の3つの層(レイヤー)に分けて説明する手法を使って、わかりやすく説明していく。そして、コンテナを握る者こそがプラットフォームの支配者ーすなわち握っている人がすべてをコントロールするプラットフォームになっていくとしている。
「コンテンツ」(記事そのもの)ー新聞記事/番組:ex吉本興業お笑い番組

「コンテナ」(記事を運ぶ容器)ー新聞紙面/テレビ→ヤフーニュース、検索エンジン、ブログ、2ちゃんねる:exユーチューブ

「コンベア」(容器を配達してくれるシステム)ー販売店/地上波、衛星、CATV→インターネット

また、メディアを、1.パーソナル(少人数)、2.ミドル(特定層で数千人)、3.マス(数百万から数千万)に分類し、ネットの普及によりミドルメディアの情報が大爆発を起こし、マスメディアの崩壊というパラダイムシフトを起こしたと説明する。(p35)広告スポンサーも、ネット広告をセットにするよう求める動きが出ているわけだ。アメリカでは、グラムメディアネットワークという650以上のブログが集まって広告ネットワークが成り立つまでになっている。

著者は新しいメディアを作っていけばいいと言うが、権力の監視というようなジャーナリズムを維持していくためには、先に米国発ブログ革命の著者が問題提起していことも重ね合わせると、市民が負担してもいいと思う範囲で公共機関やネットワークの活用などが必要になってくるのではないか。


(目次ー引用)
第1章 マスの時代は終わった(「マス」の消滅;「大衆」から「少衆・分衆」へ ・・);
p20:マスメディアの崩壊は、・・第一に、マスメディアの「マス」が消滅し始めていること。第二に、メディアのプラットフォーム化が進んでいること。
p42:(新聞とテレビがコンテナとコンベアが失われると3つのパワーが奪われる)1.どの記事を読んでもらうのか、どの番組を観てもらうのかというコントロールのパワー、2.どんな広告をコンテンツにあわせて配信するのかという広告のパワー、3.コンテンツの有料課金をする決済システム⇒コンテナ部分を握る企業にパワーはシフトする


第2章 新聞の敗戦(ミドルメディアで情報大爆発;広告業界はテクノロジー化する ・・);
p81:デモグラフィックという用語→性別や住所、職業、学歴、家族構成などの属性データのことでマーケッティングの基本・・(なお、著者は1988年に毎日新聞に入社で当時の同期は80人と記述あり)
p86〜M1層(20歳から34歳までの男性)は、新聞を読まない→R25のターゲットに
p101:(クレイグリストを重要な経営戦略についてもユーザーが書き込んだリクエストをただ反映させているだけと皮肉ったヘラルドトリビューンに)こんなに消費者目線の会社に、高みから読者を見下ろしてきた新聞社が勝てるわけがないのだ。
p104〜凸版印刷が運営するshufoo!(しゅふー)チラシのネットワーク、リクルートタウンマーケット電子書籍リーダー「キンドル

第3章 さあ、次はテレビの番だ(開局以来の赤字転落;完全地デジ化と情報通信法 ・・);
p160:広告クライアントがテレビCMから離れつつある。これが第一の危機。加えて第二の危機として、いまやアメリカのオープンな水平分散の世界で生まれたさまざまなサービスやテクノロジーが日本にもどんどん流入してきて、垂直統合を少しずつ壊し始めているということ。→HDDの普及、録画ネットビジネス、
p180:フールーHulu動画サイトは健闘・・スポティファイはiTunesに対抗して無料、4大レーベルとマイスペースの連携サービス。
p194:(次世代STBの役割)1.番組コンテンツをパソコンなどを介在させずにまとめてコントロール、2.受信した番組コンテンツを大画面テレビやゲーム機、パソコン、携帯電話などに振り分け、それらの機器で見られるようにする、3.番組に広告を配信する機能を持つ、4.有料コンテンツの支払いなどを決済できる機能を持つ
p203〜上から目線で失敗した「サーバー型放送」(→次世代プラットフォーム争奪戦でテレビ局が奪える可能性はほとんどない)


第4章 プラットフォーム戦争が幕を開ける(グーグルは敵だったか;ネットユーザーを唖然とさせた毎日新聞 ・・);
p213:(グーグルニュースと新聞社はウィンウィンの関係だが地主と小作人という関係に)残された選択肢は二つ、プラットフォームになるか、それともコンテンツ提供者と割り切るか。
p232:私たちにとって必要なのは、新聞やテレビじゃない。執拗な情報や良質な娯楽、そして国民として知らなければならない重要なニュースにきちんと触れられるメディア空間だ。・・私たち自身が一生懸命考えて、新しいメディアを作っていけばいいのである。


{図書館から借り10/9読了、記入は11}