読書録

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働きすぎの時代/森岡孝二

働きすぎの時代 (岩波新書 新赤版 (963))

働きすぎの時代 (岩波新書 新赤版 (963))

図書館に設けられた「働き方」の特設コーナーから借りる。3年前の本だが、状況は全く変わっていない。
分析はアメリカでの研究の翻訳も通して鋭いと感じたが、対策として、「菜園家族レボリューション」として、農業従事による自給自足を含めたライフスタイルというのは、ちょっと現実的ではないように思った。
自分の働き方を振り返るに、今は少し余裕がないわけではないが、3年前までは、週に1日休めれればよい方で、一日は9時〜25時か23時の14〜16時間という、この本によれば、「一日10時間が超えるほどに長ければ、疲労とストレスがたまり、最悪の場合は死にいたる」(扉&p182)可能性もあったということか。以下、引用。

p20:背景として高度資本主義の4つの特徴→1.グローバル(競争激化) 2.情報(時間競争) 3.消費(拡大) 4.フリーター(非正規雇用の拡大) -資本主義。また「高度-」は、池澤夏樹氏の「東京性疲労」からの引用。
p33:1990年代に入ると、・・情報ツールの普及が仕事を楽にするよりはむしろストレスを増大させ、私生活への仕事の侵入をもたらしてきた。・・締め付けやいじめが横行し・・疲労と不安で自分本位になり、仲間意識が薄れ、人間関係が険悪に。
p63:「いつでも、どこでも、誰でも」インターネットを利用して、情報の自在なやりとりを行うことができる「ユビキダスネットワーク」が実現に向かいつつある・・ライフスタイルやワークスタイルを大きく変えつつある。
p74:テクノ不安症とテクノ依存症→ブロードの「テクノストレス」信じ難い速度で、全体の仕事量はかえって膨大に・・時間は圧縮。
p84:消費を自己目的とする浪費的なライフスタイルが大衆的現象となり消費資本主義が誕生。ショアは消費において、他人と比べ、他人と張り合い、他人に誇示する。
p90:労働長官をやめたライシュの「勝者の代償」、収入のために働くことが豊かにさせるのであれば、どうして個人的な生活は貧しくなってしまうのか。ニュー・エコノミーの原動力はテクノロジー・・・目もくらむスピードで疾走し、激しい競争。・・生き残るために絶え間なく改革をし続けなければならない。
p93:長い労働時間が家庭生活の危機を生んでいることに関し、ライシュは、労働時間を弾力化することや育児や介護の費用を「必要経費」として所得税から控除する制度の導入を提唱。ただし、基本は規制緩和論者で、「すばらしい取引の時代」が提供する、より良い、より速い、より安い製品サービスはもはや放棄することができないと考えている。
p167:★フルタイムとパートタイムの時間当たりの賃金格差をなくして、両者を労働時間数に応じて平等に扱うことによって、男女平等の推進と失業問題の解消に挑戦した「オランダ・モデル」と呼ばれる社会改革の実験。
p172:働きすぎと亮日が蔓延するアメリカ社会のただなかで、★所得よりも自由時間を、出世よりも生活の質や自己実現を追求する生き
方を選び、「以前より少ない収入で幸せに暮らしている」人々が増えている。
p175:スローライフスローフードを少しでも実践しようとする人々は、自らがコミュニティのなかでは、・・・地域通貨のライフスタイル運動にも取り組む。
p184:長すぎる労働時間は、夫婦の時間がもてない、子育ての時間がないなどの理由で、夫婦のすれ違いや不和や離婚のもとになる。鍛冶屋育児の負担が女性に押し付けられる環境では、男性の長時間労働は、女性に結婚をしない、あるいは子どもを作らないという選択を迫る要因となりうる。今日の日本における少子化の傾向にはこういう要因も働いていることは否定できない。・・長すぎる労働時間は、家庭だけでなく、地域生活をも危うくする。PTAや自治会の活動に父親の姿が少ないかほとんどない。
p195〜働きすぎにブレーキをかける指針:労働者)
◇自分と家族の時間を大切にし、仕事以外に生き甲斐をもつ。
◇家事労働は分担し、近所付き合いや地域のボランティア活動にも参加する。
◇年休はめいっぱい取得し、年に一度は1〜2週間の連続休暇をとる。
◇残業はできるだけせず、労働が過重な場合は労働組合や会社に是正を求める。
◇心身の不調を覚えたときは、ただちに医師の診察をうけ、指示に従う。
◇情報ツールによる仕事のボーダレス化を阻止し、時間によっては受信を拒否する。
◇サービスや利便性を売り物にする消費の在り方を働き方から見直す。
◇働きすぎと浪費の悪循環から抜け出して、スローライフに転換する。
p205〜法律や制度はどう改めるべきか)36協定の有効性を見直し、一日の残業の上限を原則として2時間にする。など。
p210:指針と対策は、「人間らしい生活を可能にするには、人々の働き方/働かせ方に関して一定の基準が必要だ」
p211:本当の意味で経済を回復させるためには、労働時間を短縮し個人所費を拡大するとともに、労働者が働きやすい職場を創ることが求められている。

{図書館で1/25借り2/5読了、記入は2/9}