読書録

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ピケティ入門

ピケティ入門 (『21世紀の資本』の読み方)

ピケティ入門 (『21世紀の資本』の読み方)

格差問題を取材してきた元新聞記者で、現在大学で教鞭をとる著者が、『21世紀の資本』の読み方を解説する。格差は放置すれば拡大するため、人為的に力を加えなければ平等な社会の実現は難しく、「格差を放置せず、平等へ向けた格差縮小の力を創出することこそが人類の知恵の発揮のしどころp6」が、ピケティ氏のメッセージだと紹介する。

ピケティ氏のポイントとして、税関係の統計書類を使って長期間の格差の動きを分析し、政策として、所得税への累進課税の引き上げや、世界的資本税などを提唱することなどをわかりやすい言葉で紹介しているが、”白熱教室”で見た講義を簡潔にまとめているように思う。

本著では、日本の格差問題を取り上げ、経営者の高報酬や業績主義の導入による賃金格差の拡大などを指摘している。日産CEOの報酬8.9億、マクドナルドでの名ばかり店長ユニクロ会長の世界同一賃金提唱、IBMのボトム10とトップ10&ゼロか無制限の昇給は上司のさじ加減、などなど手厳しく紹介する。pp52-72


出版した金曜日のサイト⇒ http://www.kinyobi.co.jp/publish/publish_detail.php?no=3368


現政権の経済や労働政策について批判する立場で本著は貫かれているので、その距離感からメディアや財界人へも厳しい指摘をしている。「解雇の金銭解決制度」「新しい労働時間制度」「限定正社員」「労働者派遣法改正案」の4つについて、賃金を上げることが難しくなる改定だとし、「高額報酬の上層管理職・経営者層が政府の中枢に入り始めたことと無縁ではないでしょうp93」などと推測する。

著者は「格差の拡大を深刻にとらえる政党は社民・共産など数えるほどになってしまいましたp76」と書き、ある意味、立場を明確にしているだけにわかりやすい主張ではある。ただ、経済動向や働き方については、ダイバーシティなど様々な考え方があり、もっと複雑さを受け入れながら、辛抱強く考えていく必要があるような気がする。


{11/28読了、記入も同日}