読書録

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こんな子どもが親を殺す/片田珠美

こんな子どもが親を殺す (文春新書)

こんな子どもが親を殺す (文春新書)

週刊誌からの引用が多いのが信憑性の部分で若干気になるが、過去の少年事件の分析などを通して、子どもに自立を促すような「父性の喪失」が背景にあると指摘する。ちょうど思春期の難しい時期にかかってくるので、健やかに育ってほしいと願うばかりではある。

水戸のひきこもり少年の親殺し(2004年11月)については、両親が先生でありながら、少年にとっては「便利な存在」でしかなく、土浦の親殺しとも共通するのは、親が固い職業でまじめな家庭、経済力もある。親殺し事件の多くは、中流以上の教育熱心な家庭で、まじめな子によって引き起こされる・・まじめな子はストレスと不満をため込んで、突発的に暴発してしまいやすい(p41)父親の無関心も多い。
p52:精神科医斎藤環氏が「社会的ひきこもり」で指摘している「ひきこもりは男性、とりわけ長男に多い」
p55:ひきこもりの子どもがいる家庭に一般的に認められるの特徴としてしばしば指摘されるのが、母親の過保護と父親の無関心である。

阪大生の母親殺人(2006年7月)でじゃ、思春期なっても親に反抗せず意向に沿って生きようと「いい子」を演じてきたが、そのために自立が妨げられ、「期待に応えられない」と感じたときには、家族との関係を断ち切るしかなくなる。(p100)母親殺し(3例)の共通は、母子密着、親(特に母親)の期待、父の不在という要因がある。これは現代日本の数多くの家庭に見られる。(p116)

奈良の放火殺人(2006年6/20)については、父への反発がありながら、抑圧されて、おそれがあって手が出せなかった。この父親の価値観、「ほとんどの親がいい成績をとり、いい大学にあいることが子どもの幸福につながる」にとらわれている限り、同じような悲劇はまた起こる(p146)
p154:優等生はささいな挫折に弱く、少しでも自己愛が傷つくことがあると、暴走することになりやすい。

p165前兆行動:1.別居、離婚、死別などによる家族の構成員の変化 2.攻撃性、破壊性を示唆するような言動 3.スポーツなどの部活動をやめた、あるいはやめさせられた後。←性的エネルギーの衝動目的からそらす目標を失ってしまうから(p170)

p177:思春期に母子一体化幻想を断ち切るような何らかの力が外部から作用することが必要、子どもの目を外に対して開かせることもできるようになる、これこそ父性の力。これが今希薄になっている。
p183:父親が受験勉強にも細かく干渉するようになると、家庭の中に母親が2人いるような状況になり、過剰な母性による過保護、過干渉を生み出している。母性が子どもをやさしく迎え入れ厳しい外の世界から守る安全地帯のようなものだとすれば、父性は子供に自立をうながし社会に押し出してやる力。バランスが必要なのに、父性が薄くなっていることが問題。母性だけでは思春期青年期に自立できない。

p193処方箋:1.過度の期待は禁物 2.母子密着は禁物 3.抑止力を高める(親以外との人間関係) 4.危険信号を見逃すな 5.早めに相談を。



{フォーラムで1/24借り30読了、2/2記入}