読書録

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まだ遠い光;家族狩り5/天童荒太

まだ遠い光―家族狩り〈第5部〉 (新潮文庫)

まだ遠い光―家族狩り〈第5部〉 (新潮文庫)

p453亜衣の言葉「よかったんだって、生まれてきて良かったんだって、この瞬間だけでも思いながら、いきたいからさぁ」「わたしなら、最期のとき、もしそこにママの頭があったら、撫でてあげよう。でも、それってママのためじゃないんだ、きっと。わたしのためなんだ。わたしが、生まれてきて良かったと思いながら、死にたいからなんだ。わたし、生まれてきてちじゃったって、ずっと思いたかったんだ」
「わたしはだから、だからさ、つまりさ、生きたいんだ」
世界中でいろんなつない出来事が起きている。そうした場所のどこも、いまの私には遠い。でも、生きたいと思いながら、生きづらさを感じていた、一人の少年のこと、一度もあうこともないまま亡くなった人のことは、いまとても身近に思える。その人を通して考えながら、生きるのは、おかしなことだろうか。

p501著者の『あとがきにかえて』より「世界にはいまも悲劇があふれています。国内にも、小さな家庭のなかにも、つらい出来事が毎日のように起きています。耐えてゆくには、また見続けてゆくだけでも強い精神の力が必要です。きっとひとりでは無理です。誰かと声をかけあい、支えあわないと、苦しすぎます。勇気をもって、一歩踏み出し、声をかける・・・それだけで意外に大きい変化が生じるように思います」

生きづらい世の中で、なんとか生きていきたい、そう思わせてくれる作品でした。文庫本の毎回あとがきで著者が語りかけるスタイルも、新鮮ではありました。最後の締めのことばが、やはりテーマなのでしょう。登場した氷崎と巣藤、馬見原とその妻、いずれも支えあいながら、歩んでいくのでしょう。さて身近な家族は・・・

{地下鉄リサイクルコーナーより}