読書録

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インターネットはなぜ人権侵害の温床になるのか

京都府立大学情報環境学グループが、2010年から京都府内の学校を対象にネットパトロールを行っていることを本著で知る。現在は74校を対象に一日一回、問題のある書き込みをチェックしているという。インターネットの歴史や意義から書き起こして、その影の部分に触れ、人権侵害の具体例などを紹介している点は、よくわかる。ただ、今後の防止策として、恥を知り、孔子の「己の欲せざる所、人に施すこと勿かれp130」を引用して、思いやりを持ち続けることを訴えているところは、気持ちはわからないでもないのだが、いま儒学を唱えることには、果たして受け入れられるのかとも感じた。


出版したミネルヴァ書房のサイト⇒ http://www.minervashobo.co.jp/book/b181462.html


印象に残ったポイントを備忘録として以下、まとめながら引用。
◇SNSが人権侵害の温床になる原因4つp19〜21
1.匿名性、
2.刑法の名誉棄損罪や侮辱罪が親告罪
3.交流の場をプライベートな場所と誤認しやすい
4.使用の容易性

◇人権侵害の可能性がある書き込みの4類型p27 高校生多い
・外国人(最多:匿名多い)、同和問題障碍者、その他
(←本著では、障害者の害の字を使うこと自体を人権侵害の可能性とし、「碍」を使って表記している)

徳育として儒教などを紹介p59〜63
儒教五常仁義礼智信)と五倫(父子の親、君臣の義、夫婦の別、長幼の序、朋友の信)
・武士道:義、勇、仁(惻隠の情)、礼、誠、君臣の義
・注目すべきは「恥」の思想⇒仁は恕(思いやり)と忠(いつわりのない心、まごころ)からなる⇒親孝行が徳の始まり、徳育は家庭から。家の恥という気持ちでネット人権侵害を思いとどまってもらいたい
⇒厳罰化とネットパトロールの技術進歩だけでは、ネット人権侵害の蔓延を阻止するのは困難と考え、徳育が必要だという考えに行きついた(p126)

◇ネット上での事件の特徴3点p66
・急激に拡散、・さまざまな立場が事件の関係者に、・各関係者が自分の立場を正当化する理由を持つ

◇EU委員会による表現の自由を拡大解釈した違法・有害なコンテンツp71
・個人の尊厳の確保にとって有害(人種差別)、
・プライバシーの保護にとって有害(非合法的な個人情報の流通)、
・名誉棄損、信用失墜(中傷、不法な比較広告)、
知的所有権侵害(著作物の無断配布)

◇基礎ルール=『ネチケット』(バージニア・シャーp31-33)p87〜88
1.皆、人間であることを忘れてはいけません
2.普段の生活で守っているのと同じ行動基準に従うこと
3.いい加減な表現をしない
4.罵倒戦争を自制しよう
5.人のプライバシーを尊重しよう
6.人の過ちには寛容に
まとめると(p88)1.行動指針は現実世界と全く同じ、2.想像力を高め、相手の気持ちや事情に十分配慮しましょう


{11/15-16読了 記入は23}