読書録

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 国家の命運

国家の命運 (新潮新書)

国家の命運 (新潮新書)

北朝鮮の核開発を巡る六カ国協議で、よくTVに出ていた著者が、これまでの外交官生活や外交交渉、これからの方向性などについて、率直に語ってくれている。

そもそも日本の外交は、幕末の黒船来航以来、「受け身で、言いわけ、小出し」の3つの姿勢が用いられてきた一方、中国は「動じない、言いわけをしない、相手を攻撃する」というパターンで、内田樹氏の「日本辺境論」をたびたび引用しながら、これではいけないと主張する。辺境の限界として日本の特殊性として思考をストップすることなく、日本の若者に向け、最後に(p187)「しゃべれる英語をマスターし、ロジック力をつけ、攻撃力をつけ、世界t堂々とわたりあってほしい」と希望を託す。

また、交渉術として、信頼関係を築けるかどうかが合意に辿りつくツボだとして、1.ウソをつかず、欺かない。2.絶対に必要なことと、融通の利くことを分け、優先順位を相手に分かるように伝える、3.ダメなこと、デリバーできないこと(約束を実行出来るかどうか)は、はっきりいう。の三つをあげる。また、オフェンスとロジックが重要で、交渉結果hあ「51対49」が原則でそこから60に近づけることだという。これらは、外交だけでなく、あらゆることに通用するようにも思う。

外交面では、北朝鮮の交渉のしたたかさについても触れられる一方、日本側として、いかにロジックを組みながら「拉致」について触れたのかを、さりげなく紹介して(p140)いるが、この交渉は極めて難しいものだというのはよくわかる。また、とかく批判されがちな人的貢献で、アフガンでは社会的インフラ整備で高い評価を受けていることに触れている。

また、今後の方向性として、人口動態の変化=人口が減少していく社会というが危機的な状況だとして(p76)、ハイテクや介護などの分野で外国人労働者によるサービスを考えるべきだと提言する。100万人単位で外国人労働者を受け入れるなどなりふり構わない思い切った対策が必要という考えだ。

保守系の方々からは批判を受けそうな内容ではあるが、逆に、外務省のトップにいた著者の考えは、極めてまっとうのように感じた。

{4/18-20、記入は23}