読書録

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『ナイチンゲールの沈黙』 海堂尊 著

ナイチンゲールの沈黙

ナイチンゲールの沈黙

この著者のテーマ、AIが再び盛り込まれるとともに、重要な役割を果たす今回の作品。ジェネラルルージュの凱旋の方を先に読んでいたので、その際に分からなかったことが、謎解きのようにわかったことも、楽しめた。ただ、新しい捜査手法(デジタル・ムービー・アナリシス)や展開(歌で映像を見せること)が現実的かどうかということについては、余計な疑念が浮かんでしまったのが残念。

一方で、端役で登場する小児科医の内山聖美先生の仕事と私生活のバランス感、「権利として年休を使い、リフレッシュしたいだけ。人間として当然の権利を行使できずに、医師としての仕事はできません」「医師の仕事は他人を幸せにすることです。自分が幸せでなくて、どうして他人を幸せにできるのですか。私は副島先生みたいに滅私奉公するつもりはありません。プライベートの時間は自分だけのものにしておきたいです」(p338)で、副島先生の堪忍袋の緒が切れて小児科医は務まらないというわけだが、結構いまどきの感覚からいえば、現実感はある。手術の同意をとることを看護師の方に任せてしまったり、患者への責任感とか問題が多々あるのだが、こういう医師は、なんともいそうな感じがするし、完全には否定できない面もあるような気がする。本筋とはあまり関係はないのかもしれないけど、今の小児科医不足をも考えさせる一つのシーンにはなっていた。

(扉ー引用)
東城大学医学部付属病院・小児科病棟に勤務する浜田小夜。担当は、眼球に発生する癌―網膜芽腫(レティノブラストーマ)の子供たち。眼球を摘出されてしまう彼らの運命に心を痛めた小夜は、子供たちのメンタルサポートを不定愁訴外来・田口公平に依頼する。その渦中に、患児の父親が殺され、警察庁から派遣された加納警視正は院内捜査を開始する。小児科病棟や救急センターのスタッフ、大量吐血で緊急入院した伝説の歌姫、そこに厚生労働省の変人・白鳥圭輔も加わり、事件は思いもかけない展開を見せていく…。


{地区センターから借り11/1読了、3記入作業}