読書録

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『ルポ 貧困大国アメリカ』 堤未果 著

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

予約からようやく回ってきて読む。自由競争の行きつくところは、ここまでひどいのか?教育、いのち、暮らし の民営化が、貧困層に打撃を与えている実態がこれでもかというぐらいリポートされている。そして、借金の返済のために軍にリクルートされていく実態というのは、いったい何なんだろうか。オバマ大統領が誕生した背景がよくわかるような気がしつつ、現在進めようとしている医療保険改革に反対の声も多いという報道が伝わってくるが、民営化のいきつくところがこういう社会だとすれば、ちゃんと考えていかなければならないだろうと思う。


(扉ー要旨)
貧困層は最貧困層へ、中流の人々も尋常ならざるペースで貧困層へと転落していく。急激に進む社会の二極化の足元で何が起きているのか。追いやられる人々の肉声を通して、その現状を報告する。弱者を食いものにし一部の富者が潤ってゆくという世界構造の中で、それでもあきらめず、この流れに抵抗しようとする人々の「新しい戦略」とは何か。

(目次ー引用)
第1章 貧困が生み出す肥満国民
新自由主義登場によって失われたアメリカの中流家庭;
なぜ貧困児童に肥満児が多いのか;p27:マクドナルドだけ食べ続けた映画『スーパーサイズ・ミーモーガン・スパーロック監督
フードスタンプで暮らす人々;
アメリカ国内の飢餓人口;


第2章 民営化による国内難民と自由化による経済難民
人災だったハリケーンカトリーナ;p43:FEMAは実質的に民営化されたも同然、p46:国民の命に関わる部分の民間委託は間違い
「民営化」の罠;棄民となった被災者たち;
「再建」ではなく「削除」されたニューオーリンズの貧困地域;
学校の民営化;
「自由競争」が生み出す経済難民たち;


第3章 一度の病気で貧困層に転落する人々
世界一高い医療費で破産する中間層;
日帰り出産する妊婦たち;
競争による効率主義に追いつめられる医師たち;
破綻していくアメリカの公的医療支援;
株式会社化する病院;笑わない看護婦たち;
急増する医療過誤;急増する無保険者たち;


第4章 出口をふさがれる若者たち
「落ちこぼれゼロ法」という名の裏口徴兵政策;
経済的な徴兵制;
ノルマに圧迫されるリクルーターたち;
見えない高校生勧誘システム;
「JROTC」;
民営化される学資ローン;
軍の第二のターゲットはコミュニティ・カレッジの学生;
カード地獄に陥る学生たち;
学資ローン返済免除プログラム;
魅惑のオンライン・ゲーム「アメリカズ・アーミ 」;
入隊しても貧困から抜け出せない;
帰還後にはホームレスに;


第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」
「素晴らしいお仕事の話があるんですがね」;
「これは戦争ではなく派遣という純粋なビジネスです」;
ターゲットは世界中の貧困層
戦争で潤う民間戦争請負会社;p164:ハリバートン
見えない「傭兵」;
一元化される個人情報と国民監視体制;
国民身分証法;p177:格差を拡大する政策で徴兵制は必要なくなる
州兵としてイラク戦争を支えた日本人;
「これは戦争だ」という実感:p186:いのちをものさしにした民主主義:ゴールは環境や人権、人間らしい暮らしに光をあて、ひとりひとりが健やかに幸せに生きられる社会を作り出すこと。


エピローグ
p197:日本でも中間層のサラリーマンが国を支えていた時代には、大学を出れば就職、そして結婚し、家庭を持ってマイホームを購入、退職したら年金暮らしが待っているという「一億総中流の時代人生計画」が存在した。だが、「規制緩和」「民営化」「自己責任」などのキーワードと共に加速していった流れの中で、日本の中間層にいた人々は過労死やリストラの犠牲になり、「ワーキングプア」や「ネットカフェ難民」「医療制度の崩壊」「派遣社員」「教育格差」などのことばがメディアにあふれるようになったのだ。・・決して手をつけてはいけない医療や暮らし、子どもたちの未来に関わる教育が市場にひきずり込まれていくことにブレーキをかけられなかった

{図書館で借り8/29読了、記入は30作業}