読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

『食の安全はどこまで信用できるのか』 河岸宏和 著

中国のギョーザをはじめ、吉兆、など食品事件が相次ぐ中で、表示をめぐる実態について、わかりやすく解説した本。
品質管理に長年携わってきた著者は、「日本の管理体制の甘さ」に警鐘をならすとともに、ビジネスエシックス(企業倫理)「仕事上で他者の尊厳を守る(p115)」の重要性を訴えている。

スーパーで閉店間際の割引になった食材を買うことが多いが、この本で、「まぐろの柵」を割引しない店では、刺身に変えて翌日出す可能性があることを(p52)を知った。また、冷凍技術の進歩で、「消費・賞味期限」が一本化されたことにより、製造日の記述が消えて、実はかなり昔に製造されたケースがあるという。
また、以下のようなことが紹介されている。
・卵のチルド保管が徹底していないのは日本だけ(p67)で、サルモネラ菌の増殖が心配されること。
・鶏肉業界では、チルドの業務用の2キロの袋が売れ残ったら凍結されて販売。
・豚のロースの明確なルールがないため、バラ肉をつけて歩留まりをあげている。
・豚のひき肉は年老いた豚が使われ、固くてけもの臭さが残る。
・〇○牛というのも、ルールが勝手で、外国で育って持ち込まれたものもある。
・魚の名前は偽装のオンパレード。
弁当屋でその場で詰める弁当は、期限表示が必要ない。
・刺身で、重量比が50%以上の原材料がない場合は、表示義務はない。
・砂糖無添加で原材料に砂糖が含まれてもよく、甘さ控えめなど、味覚表現なら根拠はいらない。
・コンビニの食品はかなり安全。管理やチルド保管など行われているから。

組織論&企業倫理として、
p118:組織の中で行動していると、社会の普遍的な倫理観が守られることは少なく、自分たちにとって都合のいい企業の中の倫理観だけを守ってしまうケースも起こります。「上司の命令」「競争心・保身」「目先の数字優先」「組織を守る」などといったことから正しい行動がゆがめられていくのです。→「沈まぬ太陽山崎豊子)から片目の猿の引用)
p160:子どもの頃に教えられた「人に見られているからやめなさい」、つまり「見つからなければいい」という考え方・・管理者は消費者を無視しています。利益だけを見ているのです。→倫理観をもった企業として、「吉野家」:消費者の舌が動かした。

この本の最後で、著者は、いつ買い物に行っても刺身などが売り場全体にあるようになった状況が偽装を生み出すことになったとして、「売り切れごめん」が当り前になる商売をと呼びかけているが、便利さを求める消費者の動向はなかなか変わらないだろうとも思う。ただ、吉野屋を動かしたように、ちゃんとした目と口をもって、見て行く必要はあると感じた。

著者のホームページは http://homepage3.nifty.com/ja8mrx/koujyou1.htm

{地区センターから6/28借り7/11読了、記入は8/17}