読書録

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『うつ病』 岩波明 著

うつ病―まだ語られていない真実 (ちくま新書)

うつ病―まだ語られていない真実 (ちくま新書)

どうも最近、ちくま新書が続いている・・著者は、うつ病心の風邪あなどというのは臨床を知らない人のたわごとだといい(p21)、大学病院の精神科教授(p36)など、厳しく批判しているが、こうした姿勢は、せっかくの著作なのに少し寂しい。

冒頭にヘミングウェイの自殺を、ラストにヴィヴィアン・リーの死を紹介し、警鐘をならしつつ、本編では、良く知らなかった薬物療法についても触れているが、どうしてこの薬が効くのかなどが、実際にはよくわかっていなということも知ることができた。

日本で増加している自殺者は中高年以上の男性で、自殺の原因の多くは健康問題、経済的問題(p201)はそうとしても、「自殺率と失業率はほぼパラレルに変化しており、統計的には両者のピアソンの相関係数はr=0.866で有意な正の相関を示した」(p204)という指摘については、この前に読んだ「つっこみ力」では、他のデータを示しながら否定されているところでもあり、どこまで相関があるのかは疑問も感じた。

ただ、成果主義の導入で終身雇用制が崩れ不安定になっているという日本社会の変化に背景を求め、「日本自体の環境を変えなければいけないと思う。『仕事をして働いているから生きている』のではなく、『生きているから仕事をして働く』という考えをすべての人が持たないと、失業したときに生きる意味を失ってしまう。そうではなくて、仕事をして働いていなくても、自分は生きている、生きている意味があるのだと思えるような社会を作ってほしい」(p218)というのは、とても共感できる。

最近、衝撃を受けたのは、川田亜子アナウンサーの自殺。数日前からポータルサイトの上位ニュースで、ブログに本人が不安を書いているということがのり、実際に本人のブログを見たが、多くの人が応援メッセージを書く中で、いわば衆人環視のなかで実際に命を絶ってしまった。報じられているのは、まさに「仕事」のことが多いが、その意味では、著者が指摘しているような意識を持てれば良かったのかも知れない。ご冥福を祈ります。

{フォーラムで5/2借り24読了、記入は31}