『キャラ化するニッポン』相原博之 著

キャラ化するニッポン (講談社現代新書)

現実のリアルより、キャラがたつ世の中になってきた→仮想現実のほうに強いリアリティや共感を覚えるようになってきたことを、日本の社会史も振り返りながら解説。小泉総理や東国原知事がなぜ受けるのかも、こうした切り口で見て行くとわかるような気もする。ただ、「キャラ」の定義について、中盤で論じているが、わかるようなわからないようなところがある。この先にどんな世界があるのか、終章では、セカンドライフがファーストライフになるときがやってくるかもしれないというが、さてどうか。あとがきにあるように、キャラ化というキーワードで、続編を期待したい。以下、面白かったところ引用。
ｐ27：キャラクターの精神的効能　1.やすらぎ　2.庇護　3.現実逃避　4.幼年回帰　5.存在確認　6.変身願望　7.元気・活力　8.気分転換で、1〜4癒し系、6〜8活力系と5の3つの分類。
ｐ51：「むひょキャラ」＝無表情なキャラクターの意味で、たとえばハローキティには口がない→勝手に解釈でき感情を投影できる。
ｐ69：香山リカ『多重化するリアル』で、現実感覚の希薄さから離人症などの解離性障害をもつ若者が増えていると指摘。ネット社会は、「キャラ化社会」で、仮想現実を現実と感じる感覚が広がった。
ｐ72：★アマゾンで資料集めをすると、その資料関連の本が推薦され、本来のパーソナリティとは別に「社会的な私」が決定される。←●確かにこれは経験する。たまたま検索しただけなのに興味があると判断されるのか・・・。
ｐ94：小泉総理が政治に持ち込んだ「キャラ化」で、今では、サプライズのない政治には誰も関心を向けず、キャラ立ちしない政治家の人気はあっという間に地に落ちる。東国原知事もキャラ政治の申し子。
ｐ100：経済のキャラ化で、働く側の心理も変化。過酷な労働と低賃金ですさんでいく労働者がいる一方、パソコンひとつで巨万の富を得る人も存在、格差社会の中でコツコツと働くことが馬鹿げたことという意識も広がっている、経済から実体が失われつつあるのだ。
ｐ114：子による親殺し、親による子殺しなど、家族に対する意識が大きく変化、「フラット化」（トーマス・フリードマン）と関連づける
と、経済のグローバリゼーションによる平準化は、会社と家庭、公と私、大人と子供など、ヒエラルヒーが存在していた価値観や概念もフラット化＝等価になりつつある。
ｐ122：マンガ評論家の伊藤剛による定義で、キャラクターとキャラを区別し、「キャラクターに先立って何か存在感、生命感のようなものを感じさせるもの」を「キャラ」と位置づけ、「多くの場合、比較的に簡単な線画を基本とした図像で描かれ、固有名で名指しされることによって（あるいはそれを期待されることによって）「人格・のようなもの」としての存在感を感じさせるもの」と定義。一方、キャラクターは、「キャラの存在感を基盤として、人格をもった身体の表象として読むことができ、テクストの背後にその人生や生活を想像させるもの」と定義。
ｐ128：仲間同士だと、「キャラがない＝居場所がない」ことになり、キャラ化によって存在証明をしている。
ｐ130：現代社会においては見えなければ価値がない、わかりやすくなければ価値がないという強い社会的圧力が広がっているといわれ、それが表面的なキャラ化を促進、キャラ的なコミュニケーションは、本来はわかりにくい内面的な人格を視覚化しわかりやすくしようという社会的要請もあると言っていい。
ｐ138：東浩紀「動物化するポストモダン-オタクから見た日本社会」で、「萌え」を、「原作の物語とは無関係に、その断片であるイラストや設定だけが単独で消費され、その断片に向けて消費者が自分で勝手に感情移入を強めていく、という別タイプの消費行動」だと語り、この新たな消費行動のことを「キャラ萌え」と解説している。→「物語消費」に対して「データベース消費」で典型はｉＰＯＤ。
ｐ153：四方田犬彦「かわいい論」で、ミニチュアとかわいい関係について引用、現実社会を縮約しながらも生身の現実から独立的に存在し、かつ強い魅力を発散している。
ｐ163：「セカイ系」とは、「私＝キャラ」が客観的な中間項のすべてを呑み込むように肥大化し、ついには世界そのものと同化してしまう作品群。この肥大化・セカイ化が、今現実世界をも呑み込んでいく。
ｐ174：そもそも「キャラ化」とは、端的にいえば、現実社会をキャラ的に生きる生き方を指した言葉でである。・・絶望的なほどに硬直化してしまっている「現実社会」を完全に脱ぎ捨てて、「キャラとしての私」として生きることが可能な社会ができあがった」

｛フォーラムで2/8借り25読了、26記入｝