読書録

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『おもかげ』 浅田 次郎 著

  『鉄道員』など映像作品で見たことはあったが、著者の本は、このブログには記録がなく、読むのは今回が初めてかも知れない。年齢的には、定年前後というところで関心をもち、帯やHPの文言にも惹かれて手に取った。文庫版の解説は、このほど安定的な皇位継承を議論するための有識者会議のメンバーにも選ばれた中江有里氏。ここに書いているきょう、日本テレビ系「ウェークアップ」にも出演、ブックレビューコーナーもかつて担当していたが、なかなかな活躍ぶりだ。

おもかげ (講談社文庫)

おもかげ (講談社文庫)

  • 作者:浅田 次郎
  • 発売日: 2020/11/13
  • メディア: 文庫
 

  物語は、主人公の竹脇正一(たけわき・まさかず)氏が、65歳の定年送別会の帰りに倒れ、集中治療室で、関わった人たちとの思い出が走馬灯のように紡がれていく。

 解説p452にあるように、「地下鉄が過去と現在を繋ぐ重要な舞台」となっていて、銀座線と丸ノ内線赤坂見附駅など、よく利用してきただけに、読みながら思い浮かんだ。『地下鉄(メトロ)に乗って』が名著とのこと、今度読んでみたい。

 

 発刊した講談社のサイト↓ 

bookclub.kodansha.co.jp

 印象に残った言葉は以下で、引用してメモ。

p25:夫婦の時間は、このさきたっぷりあると思っていた。持て余すほどの時間が。

p109:ゴールインしたとたん、僕は立ちすくんでしまった。同僚や部下たちの祝福と喝采も、遠い耳に聞いていた。もう走らなくていいという事実が、僕にはどうしても理解できなかった。

 これといった趣味はない。さしあたってやりたいこともなかった。とりあえず贅沢な海外旅行でもしようかと、節子とは話し合っていたが、それも「夢」と言えるほど大げさなものではなかった。

p363:(僕の夢)大学を出てサラリーマンになって結婚をして家を建てて子供を育てたい

p434:「みんながついているよ。人生はまだこれからじゃあないか」

 「切なすぎる愛と奇跡の物語」というのがHPでの宣伝文句ではあるが、印象に残ったのは、あまりに普通の夢の実現することの大切さと、いつ何があるかわからず、これからずっとあると思っていた時間もあっという間になくなってしまうかも知れないということ・・・コロナ禍でとても海外に行ける状況ではないが、体が動くうちに、”贅沢な海外旅行”をしてみたいものだ。

 

 
 
{2021/3/21-24読了、記入は3/27(土)}