読書録

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スタンフォードのストレスを力に変える教科書

スタンフォードのストレスを力に変える教科書

スタンフォードのストレスを力に変える教科書

 キラーストレスという言葉が、テレビ番組で最近いくつか放送され、いかに健康を蝕むかという課題がクローズアップされてきた印象はあるが、本著ではむしろ、ストレスをなくすより、ストレスは人を成長させ健康で幸せにするp22として、最新の科学的知見を紹介するとともに、ストレスに強くなる方法について、詳しく解説している。
 著者の本は、 『スタンフォードの自分を変える教室』( http://d.hatena.ne.jp/MrBooPapa/20130928 )以来2年ぶり。本著では、2006年に大学で「心理学入門」のコーディネイトを担当した際、高校では卒業生総代をつとめた男子学生がこの授業で試験を受けず成績保留になり自殺したエピソードを引用し、以来、いちど悪い成績をとっただけで将来に悪い影響が出るわけではないとサポートに全力を尽くすようになり、これが自らの教員生活で最も意義深い経験として真っ先に思い浮かんだp158と、個人的な思いについても言及している。前著を含め、この思いが、研究姿勢にも表れているのではないかと胸にぐっとくる物語だった。さらに終わりの方で、大学への入学を控えた生徒たちに、大学院1年目にデータを分析でミスをした体験談を語り、「挫折した時の経験を書いてもらう」というワークショップについて説明P286〜し、挫折があっても助けを求めることができ、やる気がますという考え方を共有できたという取り組みにも、つながっているかと感じた。
 それゆえ、ストレスについて、欠如の方が不幸になり、忙しい人ほど満足度が高いという第3章p130〜の中で、ストレスを感じている人が多い国ほど、健康状態や仕事や生活水準、地域社会に満足している人が多いことや、人生で強いストレスを感じた経験が最も多かった人たちほど、生きがいのある人生を送っていると思っていることなどがわかったという。「人生に生きがいを感じている人びとは、あまり生きがいを感じていない人びとにくらべて、心配ごとが多く、ストレスも多いp134」というのは、これまでの考え方から言うと逆説的な気もするが、実体験から考えるとなるほどと思う点もある。一時注目されたブータンの幸福度や、世界一貧しい大統領と呼ばれたムヒカさんの幸福論とも、ちょっと違う観点かとも感じる。


出版した大和書房のサイト⇒ http://www.daiwashobo.co.jp/book/b208702.html
DIAMOND online の本を紹介する記事(全文を読むには無料の会員登録が必要)⇒ http://diamond.jp/articles/-/82757


 引用したい部分はたくさんあるが、いくつかを以下に備忘録として
◇<効果の高いマインドセット(思い込み)介入>p78は、1)新しい考え方を学ぶ、2)新しい考えか方を取り入れ、実践するためのエクササイズを行う、3)自分が学んで経験したことを、ほかの人たちと分かち合う機会を持つ
+★自分の価値観を書くことが効果的=ストレスを感じた経験についての考え方が変わり、対処できる自信がつくため(←ジェフェリー・コーエンとデイビッド・シャーマンの過去15年の研究)P141
+ストレスを避けようとすると、自分自身や人生への見方が変わり、何もかも問題だと思うようになるP167(ex仕事がいや、結婚が変、子育てが間違い?などなど)
⇒★「いざというとき役立つ」と思うことが効果的なのは、自分にはできるという自信が生まれるから。「自分には人生の困難な問題に対処できる力がある」という自信を持っているかどうかで、希望OR絶望、粘るOR挫折が決まるからP213
⇒「人は逆境によって成長する」P274は主な宗教や多くの哲学の教えにあるP274が科学の知見でも裏付けられている+成長志向を育むこと

◇<ストレス反応の3つの効果>p118表
1)困難にうまく対処する:注意力ややる気が高まる、五感が鋭くなる⇒興奮し力が湧く
2)人とのつながりを強める:社会的なつながりを求める、人の気持ちに敏感になる⇒大切な人たちを守りサポートし応援したい気持ちが強くなる
3)学び、成長する:神経系のバランスが回復、経験を再現し書き換え再記憶⇒経験を理解へ
⇒ストレスに強くなるということは、感じた時に「勇気」や「人とのつながり」、「成長」という人間ならではの底力を、自分のなかに呼び覚ますこと+避けるのではなく経験で自分自身を積極的に変えていくことP175
⇒プレッシャーがある時は、リラックスよりストレスが役立つ実証的実験結果ありP180

◇<人助けをすると時間があると感じるようになるP227>時間がないとあせっているときほど、時間を惜しまずに誰かの手助けをした方がよい
+自分のための目標を追求すると孤独感が強まるP232
+★「自分よりも大きな目標」という観点から自分の職務をとらえ直してみると、もっとも基本的な仕事にもやりがいが生まれ、バーンアウトを防ぐことができるP240

ソーシャルメディアに費やす時間が多くなると孤独感が強まり生活に対する不満が大きくなるP259
⇒孤独感を和らげる2つのマインドセット介入が役立つ:1)ほかの人たちの苦しみにもっと気づくこと、2)自分の苦しみを素直に周りの人に打ち明けること
+「目には見えないものを見えるものに」エクササイズ、苦しんだ問題や経験をメモに無記名で簡単に書いてもらう、まぜて参加者がランダムに読み上げる、誰でも苦しみや悩みがあることがわかるP261

◇<ベネフィット・ファインディング(逆境のなかにも、良いてにゃ得るものがあると考えること)>P307で、用語には違和感もあるが、困難に対処していくうちに、よい点に気づく能力が役に立つ。良い面も悪い面も認識できることが長期的には良い結果につながる


 少しのつもりが、結構引用が増えてしまったが、いろいろ考えさせられる論点を含んでいると思う。いろいろ悩むことが多い中で、むしろそれを乗り越えていく力をつけていくことで、生きがいなども感じることができるようになる、ということをかみしめていきたい。


{16/814-24読了、記入は27}