読書録

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中高年がキレる理由(わけ)

新書806中高年がキレる理由(ワケ) (平凡社新書)

新書806中高年がキレる理由(ワケ) (平凡社新書)


 著者はまず、キレるという言葉を「心のなかに裂け目が生じて、これまで保たれていた秩序が崩れること」を指すものと定義づけたうえでp12、背景に「感情労働社会p40」(ホックシールドによる顧客満足を最優先すべく自らの感情のコントロールを強く求められる仕事)の反動や、IT化による急速な技術革新による変化やストレスp131に、ついていけないことなどをあげる。

 そして人生の折り返し点では、「価値観の再構築が必要p50」とし、ムカッとしたときは、「すぐに行動せずに、ひと呼吸置く習慣を身につけることp180」で、衝動的反応を防ぐことができる+衝動を抑えすぎず、衝動とうまくつきあって、日ごろの偏った生き方とバランスを取り、より生き生きした自分の創造につなげていくことが大切p114などとアドバイスしている。また、計算や暗記力など流動性知能は衰えるが、状況判断能力など結晶性知能は人生経験がものをいうので生涯にわたって伸び妥当な判断ができるようになるp192と書かれているのは、希望も感じさせてくれる。


出版した平凡社のサイトに目次あり⇒ http://www.heibonsha.co.jp/book/b217162.html


 中高年にとって「思い通りにならない」ことが増えた事例について、いくつか出てくるが、以下について備忘録としてメモ。
◇ほとんどの人は昇進が止まり、先が見えてきた感じになるが、成果を出し貢献してきたのに冷たい納得のいかない処遇を受けると感じると、やる気も失せるp55
◇「人生半ばの過渡期p68」(レビンソン)には、仕事や家庭、価値観にも足りないものや納得できないものを感じるようになる。これは人生の前半をうまく乗り切るために自己の一面ばかりを重点的に発展させ、他を抑圧するからp71
◇仕事で自己実現とか好きな仕事、休みで旅行へいくという若い世代に対し、好きでもない仕事の厳しさに耐えながらただ生活の為に必死に働いてきた自分の人生は何だったかと思ってしまうp75⇒こんなはずじゃなかった
◇能力面でパッとしない人の場合、頑張れば報われるということではなくなったため、モチベーションが上がらない。サポート役やムードメーカーで貢献した人には厳しいp82


 本著では、こうした中高年の衝動を取り上げた小説の代表として、石川達三の『四十八歳の抵抗』を紹介しているが、それこそ記憶の彼方で読んだ覚えはあり、また読んでみようか。
 

{16/07/26-29読了、記入は8/7}