読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

「道徳」を疑え! (NHK出版新書)

家にかくまっていた友人を、追っていた殺人鬼から、いるかと問われたらどうするか?嘘をついてはいけないというカントの定言命法アポリア(行き詰まり)に対し、サンデルの「さっき公園にいた」と答え、誤解を招くような表現で真実を言うp90という事例などを引用しながら、何が正しいかを自分で考える大切さを、哲学の歴史をわかりやすく解説している。

そして、道徳教育が、既成の価値観を押しつけるだけの形にとどまっていると批判する。日々進化する社会にの中でいま求められてるのは、自分と社会のつなぎ方を考える公共哲学の手法であり、不確実な問題にいかにうまくかかわっていくかが課題だとする。p202
とって代わるべき哲学の思考方法は「みんなで議論するp174〜」こと→クリティカル・シンキング伊勢田哲治氏『哲学思考トレーニング』など引用:1議論の明確化、2前提の検討、3推論の検討+価値の主張についても、1基本的な言葉の意味を明確に、2事実関係を確認、3同じ理由をいろいろな場面にあてはめる、4出発点として利用できる一致点を見つける))をあげる。
さらにハーバマスの『コミュニケイション的行為の理論』(p183〜)を引用し、「討議倫理」あるいは「熟議」を成り立たさせるための三つの原則として、「参加者が同一の言語を話すこと、参加者が事実と信じることだけを述べること、すべての当事者が対等な立場で参加すること」だという。

サンデルを含めていろいろな哲学関連を読んできたが、本著では、それぞれの思想・哲学の特徴を端的に表現し、きわめて実践的に生き方をも考えさせてくれる、ニュース解説の池上彰さん的な才能を感じた。


出版したNHK出版のサイト→ https://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=C5010101&webCode=00884212013


また、著者による本著の紹介→ http://39032997.at.webry.info/201312/article_1.html
このブログの中で、著者は、「大事なことは自分の頭で考えること。主体性を養うこと」が主題だとしている。


{3/28-4/7読了、記入も同日}