読書録

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聞かないマスコミ答えない政治家

聞かないマスコミ 答えない政治家

聞かないマスコミ 答えない政治家

あすの参院選投開票日の選挙特番では、著者が再び活躍しそうな予感がある。
子どもニュースのキャスター時代から培ってきた『いい質問』で、視聴者から見てとてもわかりやすく解説をしてくれるからで、この著作でも、その片鱗が垣間見える。
プロの間では当たり前と思われていた政党と支持団体の関係の説明に加えて、きちんとした取材に裏打ちされた核心をつく質問など、なかなかできるものではないが、選挙・政治報道の在り方に、一石を投じている。
石原氏を怒らせた「暴走老人」は、本人が政見放送で触れるほどになったが、急に態度を変えたあとで「相手によって態度を変えるようですね」(p18)と言えるのは、著者ならではの識見と立場だからかもしれない。
また、橋本氏とのインタビューでも、逆質問にたじたじとなるメディア側の姿を見ることが多いが、著者は「どんな返答があるか想定しておくこと」(p29)で、逆質問にも反論ができたということで、これが信頼にもつながるのだろう。

なお、著者は、テレビでの口癖「いい質問ですねぇ」には二種類あって、ひとつは、話の流れを引き戻してくれる質問、もうひとつは、ニュースの本質を衝くような質問と紹介し(p100)、アメリカでの言い回しは時間稼ぎがほとんどなので、あまりいい気にならないほうがいいようだと説明している。
さらに、「おわりに」の中で、やさしく解説するイメージと選挙特番での厳しい質問のどちらが本物かという問いに対して、「政治家に厳しい質問を投げかけるのが本来の私の姿」だとして、「今回は、本来の姿を投影する本に挑戦した」と紹介しているだけあって、著者の姿勢がよくわかる。

以下、著者のノウハウなどについて引用して紹介。


(目次ー引用)
第1章 「暴走老人」を怒らせた;
p39:★「取材不足は、質問の内容に覿面に影響します。背景までしっかり取材していないと、鋭い質問はできないのです」


第2章 安倍総裁に何を聞くか;
p65:★「質問は常に具体的に。具体的な質問をすることで、相手がどこまで真剣に考えているかが浮き彫りになります」
p80:(小泉進次郎氏とのやりとり)「相手の名前を呼ぶ。これは、相手に好感を持ってもらうために必要なことの基本です。相当しっかり勉強していることをうかがわせます」


第3章 インタビューの流儀;
◇「いまのお気持ちは?」など「ヒーローインタビュー」ではダメで、ありきたりの質問ではありきたりの声しか返ってこない。予備知識や事前の準備がないと悲惨なことになる過去の体験も。時の人にインタビューする場合は、ほとんど同じことを聴くケースが多い中で、新しい話を引き出すために過去の経歴など調べる。


第4章 派閥担当記者の弊害;
◇ニュースウォッチ9の大越キャスターの著作『ニュースキャスター』から、取材先に取り込まれかけた若いころの反省を紹介したうえで、読売新聞の渡辺恒雄主筆の『君命受けざる所あり』や『反ポピュリズム論』、島桂次NHK元会長の『シマゲジ風雲録』など著作を引用しながら、政界に影響力を与えるというあまりに近すぎる距離に対し、疑問を投げかけている。
p115:記者である以上、取材先に密着してもいいが、癒着しないでいられるかどうか、記者のモラルやプライドが大事なのだと思うのです。
p139:(田中金脈事件で追い込んだのは外国人特派員たちの容赦ない質問)その後、日本のメディアは「聞きにくいことを公の場で質問」しているのでしょうか。


第5章 政局報道より政策報道を;
p154:政治部出身者であれば、それなりに力があるという評価ですから、社内のさまざまな部局に異動しながら、出世の道を進みます。こうなると政治の世界を取材するのではなく、社内政治に熱心になってしまう記者も出てきます。
アベノミクスの2%というのは、相当に実現させることが難しい数字で、長い時間がかかることなど勉強が必要。


第6章 米大統領と記者の応酬;
p169:ヘレン・トーマスによるマサチューセッツ工科大学でのアドバイス「政治家にインタビューするなら、言ってきかせておやりなさい。あなたたちは公僕で、給料を払っているのは私たちなのだからと。どんな質問でも正当性があります。だから、決してあきらめてはいけません。情報はいつか必ず明るみにでるもの。いつの世の中にも国を救おうという人がいるのです」
p175:ニューヨークタイムスにベトナム戦争秘密文書掲載を認めた連邦地裁の判断「我が国の自由主義体制があって初めて安全保障は成り立つ。権力の側にいるものは、ますます重要になっている表現の自由と国民の知る権利、口やかましくがんこに固執する政治報道によって守られていることを認めなければならない」


第7章 政治の側のコントロール
毎日新聞が2010年4月に共同通信社に加盟し、取材体制のリストラを進める
◇短くコメントする「サウンド・バイト」:政治家の発言などを十数秒に短く編集、小泉元首相は意識して使う。
p189:★質問するときには、相手の返答を事前にシミュレーションし、逆質問を切り返すだけの準備をして臨むべきです。その努力が、質問する記者の力を伸ばします。


第8章 「いい質問」が政治家を育てる
◇問題は「観察力」「聞く力」⇒ネットの普及で特権が失われたメディア側は、「誰をも恐れず、質問を発し続けることが必要なのです」(p201)


{7/15-16読了、記入は20}