読書録

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ラジオ福島の300日

ラジオ福島の300日

ラジオ福島の300日

IBC岩手放送の震災対応を記録した本に続いて、こちらはラジオ単独の福島でのケースだが、共通するのは、ラジオとツイッターやUSTREAMなどネットとの連携が、極めて役立つということ。平成23年度日本民間放送連盟賞の特別表彰部門で、「放送と公共性」の優秀として、「災害ラジオとインターネット連動展開の記録」が受賞(p189)している。その内容として、「震災発生当日から、ツイッターで災害情報を発信するとともに、リスナーから災害情報を募集するためのメールアカウントを作成し、放送とインターネットの連動型災害放送を開始した。3月14日からはユーストリームで音声配信を開始…新たなメディアを使った災害時の情報収集・告知の形を具体的に示し、今後の発展が期待できる事跡として評価された」があげられ、インターネットとラジオが融合した姿を示している。


この取り組みの背景として、冒頭にとりあげているのは、2010年12月の大雪で雪に閉じ込められた車が300台以上あったのに第一報をつかめなかったことを分析し、全国メディアが報じる前にツイッターで情報交換がされていたことを知り、クチコミも重視しようと思ったということ。残っていた言葉には「ラジオ福島の大雪情報は、役に立たなかった」と書かれていたという。


また、発災当初はインターネットはPCではつながらないものの、携帯電話やスマホからはつながったという。そして鳥取県のトリッターも参考に、簡単に情報を共有できる災害ポータルを暫定的に組み上げ対応していくが、放送とインターネットの整合性がとれないことが、時間経過とともに増えてきたという。
リスナーから求められた情報は、給水とガソリンに集中したが、途中からガソリンは扱わなくなった(p68)のは、放送すると殺到して購入できなくなるケースがあいついだためとのこと。
ツイッターのフォロワー数は、IBCと同様、13日に5000人、14日に1万人を超えたが、集まる情報量も急増して、デマも含まれるようになり、「メールで寄せられた情報の再発信のために使うという原則を徹底した」「入ってきた情報はすべてネット用に入力して、放送はそれを印刷したものを見て行う」(p71)ことにしたという。
「効率が上がると、ラジオとインターネットの相性の良さが際立ってくる」(p72)ようになり、放送内容が、メールやツイッターを通してすぐに追加や修正の情報が届けられるようになったとのこと。


また、ユーストリームの利用には、著作隣接権で許諾を得る必要があったが、関係者の努力でクリアしていったことが記録されているが、このような取り組みに「心を打たれた」(p85)場面は、さまざまあったかとも思う。放送で助けられたと食糧でおまけをしてくれるお店、CM中止の事後報告を了解するスポンサーなどなど。
ただ、ラジオをめぐる経営環境は厳しいことは、本著の中で、神戸のkiss-FM KOBEや大阪のFM COCOLOが、2010年に経営破綻・統合されていたことを知った。神戸のFM局はとりわけ阪神淡路大震災での外国人向け放送で知られていただけに、有用だとわかっていても、いかに維持・発展させていくのか。難しい課題だ。


あと本著の中で、印象に残ったりメモしておきたいところ。
p49:までいとは「手間ひま惜しまず、丁寧に心を込めて、つつましく」の意味。
p69:3月13日(日曜)に、「アンパンマンのマーチ」を流して小さな子どもを持つ親たちから多くの感謝の言葉が届く
p131:聴き慣れた声がラジオから聞こえてくることが、どれだけの安心を生むかを実感したのだ。


{3/20-22読了、記入は23}