読書録

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「狂い」のすすめ

「狂い」のすすめ (集英社新書)

「狂い」のすすめ (集英社新書)

香山リカさんの「しがみつかない生き方」と同じように、気張ることなくただ生きていればいいんだよと諭してくれ、気持ちが楽になる本だった。

世間や金に執着した生き方をしたって、死ぬのはみな同じ、人生に意味や目的を持つとかえって世間の奴隷になって疲れる、といった考えが、キリスト教や仏教などの思想が引用されながら説明されていく。受験勉強で失敗したって勉強が好きなら喜んでもいい、失敗したって出世できなくたっていい、という。

読んだことはないのだが、サマセット・モームの『人間の絆』から、人間の歴史を知りたい国王に賢者が書物を集めるのだが、500巻を50巻に、それをさらに1冊にそれぞれ20年ぐらいをかけてまとめ、最後には一行に要約すると「人は、生れ、苦しみ、そして死ぬ」になったという逸話を紹介している。みんな死ねば平等で、この本では、「人生は無意味だ」と主人公が悟って社会の束縛から開放される過程を描いたとまとめていた。

今はどこでも成績主義が導入され、目標をたててどこまで達成できたかで評価される。本著のように達観できれば、気楽に人生を楽しめるかも知れないが、ここまで極端なのが良いのかどうか?みな好きなことばかりやっていたら、今の調子だとクレーマーだらけにもなりかねない。中谷巌氏が書いていたブータンキューバが良い社会というのも、ちょっと逆の方へ行き過ぎのような気もする。中庸というのは、ものごとがはっきりせず、受け入れられにくい部分もあるのだろうけど、現実の社会に生きながら、本著のような視点ももちながら、まあ、気長に考えていきたい。


(扉−要約引用)
今の世の中、狂っていると思うことはありませんか。世間の常識を信用したばかりに悔しい思いをすることもあるでしょう。そうです、今は社会のほうがちょっとおかしいのです。
当代きっての仏教思想家である著者は、だからこそ「ただ狂え」、狂者の自覚をもって生きなさい、と言います。
そうすれば、かえってまともになれるからです。
人生に意味を求めず、現在の自分をしっかりと肯定し、自分を楽しく生きましょう。
「狂い」と「遊び」、今を生きていくうえで必要な術はここにあるのです。

(目次−引用)
1 「狂い」のすすめ;p56:こんな社会でまともな人間になれば、われわれは奴隷になってしまいます。だから狂いましょうよ。狂うことによって、わたしたちは本当の人間らしい生き方ができるのです。わたしはそう思っています。

2 人生は無意味;p72:(人生に意味が無いとわかっていれば自殺する必要さえないといっていたが、うまい言い方を考案した)-ついでに生きている-という言葉です。

3 人間は孤独;p146:(隣人との付き合い方のヒント)正しいことは言わないでおこう


4  「遊び」のすすめ;p163:(動物社会学のアリや企業での例をもとに)2割の優秀な社員をつくるためには、8割の怠け者の社員を必要とします。8割の怠け者がいなければ、2割は優秀になれないのです。
p183:ともかく、世間の物差し1本で生きてはいけません。・・幸福になるためには、自由になるためには、われわれは狂う必要があります。

p193:わたしたちはこの人生を、なにも世間に遠慮せず、しっかりと-「遊び」の哲学でもって生きましょうよ。そういう提案が本書の結論です。

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