読書録

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1945年のクリスマス 日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝

1945年のクリスマス 日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝 (朝日文庫)

1945年のクリスマス 日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝 (朝日文庫)

 憲法改正をめぐる動きが様々ある中で、GHQ草案の作成に加わった著者が、約50年の沈黙をへて世に残した貴重な証言ドキュメントだ。テレビで見て著者の名前は記憶にあったが、こうして著作を読むと、当時の論点や息遣いが伝わってくる。さらに「人権条項」についてはかなり先進的な内容になった背景がわかる一方で、女性活躍が求められる今の時代、著者の生き方や発言は、いろいろと考えさせられる。
 なお単行本は 1995年10月に刊行された。著者は2012年に亡くなり、国内各地で偲ぶ会がひらかれていたが、21年を経て今回文庫本になった。 


出版した朝日新聞出版のサイト⇒ http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=18112
本著の原点p364「日本国憲法を生んだ密室の9日間」のDVDを紹介するドキュメンタリー工房(大阪に本社)のサイト⇒ http://www.dkobo.co.jp/pb/constitution/v01ninedays.html


 備忘録として以下、引用してメモ
◇1945年時点での連合軍総司令部の仕事は、おおざっぱに言うと、日本の軍事的な力を破壊して再び軍国主義化しないようにすることと、日本を民主主義国家として世界に通用する国に作り変えることの2つであった。p58
◇人は異国にいる時、愛国者になるp123
◇この仕事は米占領軍として最高機密…50年近く黙秘を続けたのも命令に違反しないためp176⇒新憲法の成立に大勢の人が拍手を送ったが、私たちの存在に気づく人はいなかったp254
◇(人権条項に)「一般の福祉の範囲内で」と文言が加えられておさまった。公共の福祉の前には、辛抱しなさい…というのは、共同体の中で生きる私たちにとって、永久にして最大の矛盾なのかもしれないp209
マッカーサー元帥が1か所「人権条項は、永久に修正してはならない」だけ修正してOK。「後世の歴史まで束縛するのはよくない」としてカットp240
◇(女性の権利の問題で日本側が適さないという主張に対し、ケーディス大佐の説明)「この日本で育って、日本をよく知っているミス・シロタが、日本女性の立場や気持ちを考えながら、一心不乱で書いたものです。悪いことが書かれているはずはありません」で承諾


◇「男は外、女は家庭を守って…」というのが、アメリカの庶民の考えだったp262⇒子供が生まれ、育児に手がかかっても、細々と社会との繋がりをもっていることが、本格的に仕事をする場合に役立つことがわかっていたp276⇒女性が仕事と家庭を両立させるのは、今も昔も新しい課題…女性が仕事を続けるにためには夫の協力が必要です。…仕事を続けたいなら仕事に理解のある男性を相手に選ぶことです。それでほとんどが決まってしまうからです」p343
◇いろんな国に出かけて行って、一つだけ確信したことがある。文化的には異なるけれど、どこの国の女性も思っていることは同じだということだ。子供を産み、育てる。子供の将来を考えれば、どんな女性だって、平和を切望している。家庭を守るには平和が絶対必要だからだ。男性より女性の方がずっとその思いは強いp345
◇(非嫡出子の問題で闘っている)47年前にケーディス大佐にもっと泣いてでも抗議し粘るべきではなかったかと後悔したp353〜
←女性をとりまく状況と課題は今にも通じるものがある。


<文庫版に寄せた娘 ニコール・ゴードンの言葉>
◇母の貢献は、1)女性の権利と人権、学問の自由について草稿を書く、2)各国の憲法を当時都内で見つけ出す、3)最終稿の交渉席上で通訳として参加、4)日本国憲法を擁護P368
◇P377「母は長い間、憲法に謳われた女性の権利と平和条項を守ろうと活動し、大きな支持を受けていました。そして彼女は、それに反対する方向に向かう、今の日本の政治の空気を憂いていました」

 
{16/8/29-9/3読了、記入も同日}