読書録

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「激安」のからくり

「激安」のからくり (中公新書ラクレ)

「激安」のからくり (中公新書ラクレ)

モノが安くなったと実感するこの頃ではあるが、著者は、具体的な商品や、戦後流通史と人物などを通して、激安について論じていく。


まず激安の背景として、値段がコスト積み上げ方式から消費者希望価格方式に変化した中で、企業は人件費や材料などコストの安い垂直統合型や、過剰在庫を集めて作る寄せ集め型などの低価格路線をとって対応していることを、格安ジーンズの例などをあげながら解説する。(p33)

また、ナショナルブランドNBとプライベートブランドPBを、同じメーカーが作りながらも、製造者名を明かさないことで「イメージ」を維持して、価格を維持しようとする。(p83)「イメージ戦略」がことさら重要になる。(p182)

百貨店が凋落した本当の理由は、人間関係の変化で、商品説明を長々と受けて断るのが難しい直接対面よりも、距離のあるコミュニケーションの方が好まれ、「おめかししていく」という感覚を消費者に与えない限り、百貨店の再生はあり得ないという。(p97)

また消費者主権を最初に実践したダイエー中内功氏は、客の利便性に最大限配慮しようとして商品回転率が悪化して破綻した一方、イトーヨーカ堂鈴木敏文氏は、客観性を持つ数字を元に合理的な経営に徹して市場においてリーダーシップをとったと比較する。(p130)

流通業の「アコーデオン理論」として、小さいところが大きくなり、品揃えの総合化をすると、より消費者ニーズに密着した専門的な業態が出てきて競争に加わってきて、業態が大きくなったり小さくなったりすること。(p135)

成長市場向けには激安商品を生産・供給し、市場シェアを高める。成熟市場向けには、高付加価値な商品を生産・供給し、収益性を高めるダブルスタンダードで生産活動に取り組むことが期待される。(p202)

著者はまた、フェアトレードに取り組むとともに、通信販売と店舗販売の業態の意味を理解した上で使い分けることをしないと、「不幸な激安」になり、必要を越えたデフレの進行に陥ると、最後に警鐘を鳴らす。(p210)

p216:もちろん、筆者は、「激安」や「安売り」を片方では応援しています。消費者主権をうち立てた戦後流通史の健全な流れがそこにはあるからです。しかし一方で、そろそろ「激安栄えて、国滅ぶ」を本気で心配しないといけない時代にさしかかっているとも思っています。


著者が言うことはまっとうなことなのだけど、家電量販店で、ネットの価格を見せながら価格交渉をすることは日常的に行なっているだけに、それが「不幸になる」と言われることについては、ちょっと寂しい気がする。ネットで比較する最安値を基準にしても、日替わりのように値段が変動するし、店によって差が大きいだけに、あとでしまったなあ、と思うことがあるぐらいだ。
また、普段からNBよりPBを愛用している。インスタントラーメンなど、NBは安売りでも5袋250円ぐらいするのに、PBでは200円以下で買うことができ、実質が良ければいいと考えている。
ただ、デフレが進行しすぎて、賃金がどんどん安くなるというこのスパイラルは止めないとという問題意識はある。どう折り合いをつけて解決していくのか?なかなか難しい。

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