読書録

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リスクのモノサシ

リスクのモノサシ―安全・安心生活はありうるか (NHKブックス)

リスクのモノサシ―安全・安心生活はありうるか (NHKブックス)

著者の本は、ちくま新書の『安全。でも安心できない』(この読書録2009/01/16読了)以来2冊目で、こちらの方は新書の2年前の出版ながら、リスクの心理学的な研究の様々なデータが掲載されていて興味深かった。

また心理学的な側面から、これは覚えておいた方が良いかと思った点は以下。
p74:人が自分とは違う意見の持ち主に出会うと、「彼らはイデオロギーに凝り固まっていて、判断が歪んでいる」と十分な根拠のないまま思い込みがちということである。このような考えはマスメディアや第三者組織に対しても波及し、メディアは敵対勢力に肩入れしていると見なすメディア敵視効果や、自分の判断にそぐわないリスク評価をする第三者機関について、敵対勢力の息がかかっていると見なすことにつながるのである。

p93:一般的に、生々しい単一事例を論拠に説得するほうが、統計資料を駆使するよりも受け手への影響が大きくなる場合が多いといわれている。

p150:リスク情報を伝えるマスメディアの姿勢、リスク情報の製造元である専門家間の不一致、さらにリスク情報を受け取る心のしくみ、などの原因により、われわれがリスク問題を深刻なものと感じがちで、その結果として不安を高める様子を示してきた。そして、リスクの程度を冷静に受けとめるための処方として、標準化されたリスクのモノサシを社会全体で共有するよう提案した。(←具体例では、10万人あたりの年間死亡者概数などが示されていた)

p177:経済学者アカロフによる「レモン市場」(欠陥を隠された中古車)情報の非対称性でレモンが溢れる。

p188:(信頼研究)リスク管理責任者が、”能力と専門性”を有し、人々に対して、”関心をもち、配慮すること”、そしてその責任者の性質として、”正直で公開性”が高いこと、と三要因による信頼モデルを唱える研究者もいる。・・(組織論で)”能力”、”他者への思い”、”誠実な性質”をもつと認知される構成員が他者からの信頼を得るとされる。
p195:+相手と同じ価値を共有していると感じると、その相手を信頼するようになる→主要価値類似性(SVS)モデルが重要。

p230:自発的に監視と再発時の制裁を申し出ることによって、安心を提供しながら協議の信頼と能力についての評価をも回復できると期待されるのである。

p243:一般の人々の価値を理解し、それを配慮することなしでは、いかに科学的に妥当なリスク管理政策であっても受け入れられにくいだろう。リスクあkんり責任者が信頼を改善しようと思えば、口先だけ科学的水準の高さや公正性を唱えても効果はない。あくまで自発的に、政策決定プロセスの透明性を高め、不正時の自らへの罰則を明確にすべきである。周囲の圧力によって同じことを受け入れても、後手に回れば信頼を得ることはできず、人々を安心させることもできない。


本著で示される例は、化学物質やBSE、など安全性についての身近な例が多かったが、リスクをどうとらえて社会として対応していくのか、心理的な特性を踏まえたうえで考えていく必要があると感じた。

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