読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

乳と卵

乳と卵

乳と卵

豊胸手術を受けに大阪からやってきたホステスで姉の巻子(39歳)とその娘で反発しながら口を閉ざしている緑子、それに巻子の妹の「わたし」が登場し、緑子の日記ノートを間に挟みながら、奇妙な物語は進行していく。

それにしても、一文が長く、また、古語のような変わった文体で、なんともいえない雰囲気を醸し出している。

本筋とはあまり関係ないのだけれども、p53の、『「い」を書き続け・見続けたりすると、「これ、ほんまに、いぃ?」と定点決まり切らぬようになってしまうあの感じ、今の場合は、わたしの目に女々の体がそうなってきており、だいだいなぜあそこが膨らみ、なぜ一番てっぺんに黒いものが生えており、しゅるっとなってこのフォルム、・・・・」というところに、ああそういう感覚ってあるなあ、と妙に納得したりする。

また、緑子が冒頭に書き、物語の中でもよく出てくる、「嫌」より「厭」の、後者の方が本当にいやな感じがあるので、「厭」を練習、というところも、なるほどと思ったりする。大人になるのが「厭」なのだ。

兎にも角にも、不思議な小説でした。2008年の第138回芥川賞受賞作。

{記入は9/25}