読書録

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『台湾の歴史』 喜安幸夫 著

台湾の歴史―古代から李登輝体制まで

台湾の歴史―古代から李登輝体制まで

坂の上の雲ではないが、台湾統治においても、児玉源太郎総督が開明的な大きな役割を果たし、後藤新平民政長官が、巨額な公債発行を得て近代化を進めたところを知ると、台湾論を離れて、いかに大局にたちながらアイディアを発揮していくことが重要かとも思う。あわせて李登輝氏の行ってきた現実的でゆるやかな変革というのは、すごいことだと感服した。

p151:「犬(日本人)が去って豚(中国人)が来た」とささやいた。犬は吠える代わりに守ってもくれるが、豚は食い散らかすばかりだというのである。→というのは、台湾の方の気持ちをよく表している言葉だろう。

天安門事件の翌年1990年、李登輝は抗議する学生たちにあって民主改革を約束し、「老賊」と呼ばれた万年議員たちを追い出すとともに、軍人宰相を起用する人事の妙で実力をそいでいき、実権を握っていったところの現代史は、ほとんど知らなかったことばかりだ。

著者は、日中共同声明(1972)の「(台湾が不可分の一部であると表明した中国の)立場を十分理解し、尊重する」というのが、承認したわけではないと当初いっていたのに、これを基本姿勢としてきてしまったことを批判している。より台湾のことを考えた政策がとれないものかとは、確かに思う。

台湾をめぐる情勢は、ネット上の一部で言われているように、中共の手先かどうかというような単純な問題ではないことは、よくわかった。本省人もいれば、外省人もいる。今の批判は、台湾の一部の勢力に引っ張られすぎ、中共批判だけしていればいいというものでは、決してないと思う。

(扉)
本書は、古代以来二十世紀の民主化時代にいたるまでの通史として、一定のイデオロギーによるある種の啓蒙や宣伝に陥る事を避けて、あくまでも台湾を知る上においての基礎となるように、「台湾」そのものの営みを淡々と書き表そうと努めたものである。「近くて遠い国」の過去・現在・未来、イラ・フォルモサ美麗島)の古代から大航海時代、日本統治、国民党の移転を経て海峡両岸問題に揺れる現代の政治経済の実態までを解説。

(目次)
序章.歴史への登場;
1.海賊と朱印船とオランダ人の島;
2.鄭氏政権の光と影;
3.清朝の消極政策と“民”の力;
4.近代の荒波と進む開発;
5.日本統治騒乱の時代;
6.確立した統治の基礎;
7.発展への道とさまざまな抵抗;
8.戦中と戦後の混乱;
9.中華民国・台湾の明と暗;
10.厳しい国際環境と経済の成功;
11.新たなるうねりの時代;
12.始まった李登輝の時代;
13.「静かなる革命」の進行
14.大きな変化の時代
15.確立した民主体制

{図書館で借り6/13読了、7/2記入簡易}