読書録

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『系統樹思考の世界』 三中信宏 著

系統樹思考の世界 (講談社現代新書)

系統樹思考の世界 (講談社現代新書)

トゥーランドットのセリフを章ごとに入れながら、「系統樹思考の世界」が、どのような論争のなかから生まれ、重要視されているかを説明している。知的刺激は受けるのだが、はたしてどこまで理解できているかとなると、覚束ない。先に読んだ「知の分類史」と通じるところもあるのだが、こちらの方が、より科学的というか学問として記述されているように感じる。

p147〜で、ソーカルの表形学派(数量分類学派で類似度)とへニックの分岐学派(系統関係のみ)、マイヤーの駅頭関係と類似度の情報を併用すべきとする進化分類学派 が論争したという1960年代から70年代の体系学論争、など全く知らない話だった。

また、p176〜のアブダクション:与えられたデータから最良の推論を導くための推論様式について、ジョセフソン夫婦の定式化は、
前提1 データDがある
前提2 ある仮設HはデータDを証明できる
前提3 H以外のすべての対立仮説H’は HほどうまくDを説明できない
結論 したがって、仮説Hを受け入れる
と、対立候補との競争でベストを選び出すという文脈的依存性が、アブダクションの根幹と指摘する。


p231:単純化することによってはじめて私たちに理解可能なこともあるのだというのは、これからも真理であり続けると私は考えます。
p256:ギリシャ時代以来の分類学博物学、あるいは「存在の学」としての形而上学が、おしなべて、離散的な群の実在とその背後にある本質主義を長年にわたって強固に掲げ続けることができたのは、ほかならない分類思考が、私たち人間の精神に深くしみ込んでいたからでしょう。・・・種が実在すると言いきっていいのかどうかという問題は、まさに形而上学の問題p258

もう一度なぞっても、なかなか難しい。

{図書館で8/7借り27読了、記入は9/5}