読書録

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『プレカリアート』 雨宮処凛 著

プレカリアート―デジタル日雇い世代の不安な生き方 (新書y)

プレカリアート―デジタル日雇い世代の不安な生き方 (新書y)

4/18の朝日新聞の企画記事「働く〜現場が壊れる7」に、著者(読み:あまみや・かりん)の言葉が引用されていたことに気づく。「今の働き方は過労死の正社員か、不安定で食べられない非正社員かの二者択一で不毛だ」という。この本では、正社員になりたくてもなれない非正社員の悲惨さと、異議申し立てをはじめた動きを報告している。著者の立場は明確なのだが、逆に、座談会として出てくるフリーターの息子を正社員に変えた親や、対談相手の石原慎太郎東京都知事発言にも、それなりの説得性があり、自分の今の働いている立場から考えると、単に社会が悪いとも言えないような気もする。ちなみにタイトルは、「不安定なプロレタリアート」という意味の造語で、2003年にイタリアの路上で落書きとして発見され、定義は「経済至上主義のもと、不安定さをしいられた人々」(p4)という。新聞に引用された二者択一を、本書のまえがきでは、「カレー味のうんこか、うんこ味のカレーか」と、今の状況をさしたある人の言葉として紹介している。以下引用。

p74:低賃金で不安定、何の保障もない生活をしいられているのに、「働く意欲がない」などとバッシングされるプレカリアートたち。そんな彼らが、「生きさせろ!」「生きられる賃金と保障を寄越せ!」「おらたちを使い捨てにするな!」と立ち上がったのだ。フリーターや非正規雇用の若者たちが自らの権利を獲得すべく繰り広げている行動だ。以下、この取り組みを「プレカリアート運動」と書く。
p91:07年3月24日に東京集会を開いた「反貧困ネットワーク」準備会
p126:93年に出版された『完全自殺マニュアル』(鶴見済 太田出版)より、「あなたの人生はたぶん、地元の小中学校へ行って、塾に通いつつ受験勉強をしてそれなりの高校や大学に入って、4年間ぶらぶら遊んだあとどこかの会社に入社して・・・どうせこの程度のものだ。しかも絶望的なことにこれがもっとも安心できる理想的な人生なんだ」という、当時モデルとされる「理想的な人生」は存在したが・・い浜どうか・・・夢は描けない。だいたい100万円台の年収でどうやって結婚して家族を持てるのだろう。
p134〜:座談会参加者:赤木智弘氏『丸山真男をひっぱたきたい 31歳フリーター 希望は、戦争』(論座07年01月号)戦争が起きて人がたくさん死ねば社会は流動化すると主張し話題となる。以下仮名で、団塊の世代の母親、太田さん。正社員の女性坂上さん、舞踏家でフリーターの定岡さん。この中で、赤木氏は、個人の努力ではどうにもならないと主張したほか、収入のある女性が収入のない男性と結婚するというやり方も提唱(p167)これに対し、太田さんは、個人の努力も大切という考え方はかわらない。
p144:正社員=過労死の根本原因は、1995年に日経連が発表した「新時代の日本的経営」という提言。非正規雇用者にあたる雇用柔軟型を含む3つのタイプに労働力を分けたこと。彼らを使い捨てにすることによって景気回復を図った。
p185〜:石原都知事との対談:格差ということが定着するにつれ、親たちも子供たちをどうにか少数の勝ち組にもぐり込ませたいと思っている。・・非正規雇用になったら大変だというので、フリーターにならない教育を受けて、それを真に受けて頑張ったり、勉強をものすごく強いられている。未来に対してビジョンが見えない中で、いじめという問題がでてきているんじゃないでしょうか。
(石原→):格差もいじめもなくらならいよ。p210:要は、他社とのかかわりの問題。・・競争がなかったら人間進歩しないよ。競争することで向上することってあるんじゃないですか。
p216:いじめ問題に関して「逃げるのも勇気」「弱いものをいじめてはならない」というシンプルなメッセージを石原さんから聞けたのが、非常に救いでした。
p230〜:こんな意見をいただく。1.そんなにフリーターで大変なら、田舎に行って農業でもすればいい。 2.貧乏でも楽しく生きればいい。文句をいうな。 3.フリーターが高い家賃の家に住んでいることが間違っている。 4.フリーターよりももっと大変な人はいる。世界には飢えて死んでいく子供もいる。それに比べたら大分マシ。への反論は、1.誰もができるわけない 2.政治的に利用されてしまう 3.貧乏人は貧乏人らしく苦労しろという変な意識を感じる 4.犠牲の累進性、問題点を覆い隠す。←説得性でいまいちか・・
p237:「夢を追っている」という理由で低賃金や即日解雇や何の保障もない働き方や不安定な生活が許されていいということにはならない。・・・夢を持った若者が罰をうけているかのようなこの状況は、今の社会の生きづらさを象徴するもののように思えるのは私だけだろうか。最後にこの国に望むこと。政治が企業に圧力をかければ正社員は増えるのだから、まずは正社員を増やしてほしいということ。・・正規と非正規のこの圧倒的な格差をなくすこと。・・病気やけがで働けなくなったとき、すべての人が当たり前に生活保障が受けられること。


{フォーラムで4/5借り17読了、記入は18}