読書録

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『小泉の勝利 メディアの敗北』上杉隆 著


小泉の勝利 メディアの敗北

小泉の勝利 メディアの敗北

著者自身のルポ記事21本を再掲しながら、前後に「背景」と「検証」をおいて、小泉総理時代を振り返る。著者は、竹中総理の可能性など今から見れば誤った当時の観測記事も紹介しながら、率直にその誤りや原因について考察し、このスタイルには好感を持てる。
また、メディアが小泉総理を正当に評価できなかったのか、著者自身の反省も含めて書いているが、全体としてみれば、小泉賛歌ともとれるような部分もある。ラストに、日本の政治報道に、政治家との「健全な緊張関係」を欠いていると指摘したうえで、「むしろ、私たちジャーナリズムに欠けていたのは、小泉首相に見られる率直さだったのではないだろうか。ときに支離滅裂な論理を振りかざすが、小泉は誰がなんと言おうと、正直な政治家だった」(p285)で結んでいる。
確かに自分のまわりでも、小泉総理を相手にしないという雰囲気があったが、これに対しては違和感は感じていた。政治学者の御厨貴のエピソードとして、郵政法案をめぐり、政治部の人たちが口をそろえて「解散はない」と言っていたことを紹介している(p234)が、いかにメディアが一般からも遊離していたか、「政界の常識」にとらわれすぎていたかを示すものとして興味深い。以下いくつか引用。
p102:猪瀬の「日本国の研究」を読んで共感した小泉は・・(この本はまだ読んでいないが、読みたいものだ)
p167:「説得せず、調整せず、妥協せず」御厨貴は、小泉のそうした姿勢を「三無主義」と呼ぶ(ニヒリズムの宰相 小泉純一郎論)
p182:小泉政権5年半で成立した法案の中から一本を選べといわれたら、私は躊躇なくこの有事法制をあげる。
p258:ニューヨークタイムズのハワードフレンチは、フリーランスでの仕事とを認める代わりに次のような条件を出した 1.日本語の媒体に限ること 2.ニューヨークタイムスの仕事に支障をきたさないこと 3.必ず署名原稿であること。
p278:ジャーナリズムの究極の仕事は、権力を監視することだ、友情を脇に置き、時に知己が権力の舞台に上がっても、厳しい批判の嵐を浴びせなくてはならないこともある。日本のジャーナリズムが権力との緊張感を失ってすでに久しい。思い出させたのは小泉純一郎

{地区センターで3/15借り4/1読了、記入は4/2}