読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

あなたの「死にたい、でも生きたい」を助けたい/高橋祥友

高校時代の同級生で、2人が自殺した。一人は現役で東大に合格し、入学式の日に自殺したが、その原因はよくわからない。もう20年以上前の話だが、いまだに思い出すことがある。この本では、自殺が交通事故死の4倍以上の3万人台が1998年以来続く中で、社会の関心が高まったという。その背景には、あまりに増えてしまったため隠せなくなったこと、会社に従業員の心身の健康を保つことが求められるようになったこと、身内を自殺で亡くした人が体験を語り始めたことをあげている。そして、自殺の予兆に気づいて予防のための第一歩を踏み出すことができることを焦点に筆を進めている。自殺は決して自由意思に基づいて自ら選択した市ではなく、いわば「強制された死」だと主張する部分については、集団自決をめぐる命令があったかどうかの教科書検定をめぐる議論でも、なるほどと参考になる。以下抜粋。

p22〜:「自殺に追いつめられる心理」 1.絶望的なまでの孤立感. 2.生きている意味など何もないという感覚. 3.強い怒り. 4.苦しみが永遠に続いていくという確信. 5.心理的視野狭窄. 6.不気味な諦め. 7.全能の幻想(自殺だけは自分の力だけで今すぐにできる). 
p30:自殺の危険因子(表)1.自殺未遂歴 2.こころの病 3.サポートの不足 4.性別(男) 5.年齢(加齢) 6.喪失体験 7.事故傾性(けいせい-予防措置を不注意にもとらない) 8.性格 9.虐待 10.他者の死の影響 
p45:うつ病の症状(表)1.自分で感じる症状-憂鬱など 2.周りからみてわかる症状-表情が暗い、涙もろい、反応が遅い、落ち着きがない 3.身体に出る症状-食欲がない、疲れやすい、
p62:自殺の引き金になるのはごくささいな出来事であることが珍しくない-the last straw 最後の一本の藁の意味は、頑丈なラクダが、限界まできて、最後の一本のわらで背骨を折る=最後のわずかな負荷、忍耐の限界を超えさせるものという意味。
p78:いじめさえなくせば子供の自殺は解決するという発想は、一部にしか有効ではないから、厳罰にすればよいのではない。
p82:なんとか救ってほしいと子供が発し続けているサインを敏感に受け止めて救いの手を差し伸べるのは大人の責任。
p102:●TALKの原則●カナダの自殺予防グループがまとめた対応原則: Tell「あなたのことを心配している」と伝える Askはっきりと「自殺することまで考えているか」と聞く Listen徹底的な聞き役にまわる Keep safe安全を確保する

p124:中年だと責めるべきは自分だという考えが強くなる、自分よりも能力が劣ると思っていた同僚が高く評価されたり、組織が自分の能力を適切に評価してくれず不遇をかこつ、納得のいかない転勤や出向など。人生の折り返し点でさまざまな問題が出たとき、●「残された人生で自分にできることは何か、自分にできないことは何か、これだけは自分がやっておきたいことは何か を見極める必要がある」●
p126〜:「こころのバランスを保つため」 1.周囲との人間関係を大切にするとともに、自分だけの時間も持つ. 2.優先順位をつける. 3.いつも全力投球していないか、適度の休養を取っているだろうか. 4.重要度の高くない事柄に追われて、日常生活を忙しくしていないだろうか. 5.何が大事で何に手を抜けるか. 6.無駄な時間を無駄に過ごす能力. 7.エネルギーの注ぎ口を広くしておく. 8.これしかないは危険なサイン. 9.時には静観することも必要. 10.健康な諦め(自己の限界を受け入れ、やってきたことを肯定しようという態度も必要)
p133〜」「自殺が迫る状況」 職場における危険-努力しても評価されない、扱いに不公平感を覚える、上司と部下の板挟みになる 家庭における危険-自分や家族が病気になる、夫婦の不仲、介護に悩む、
p163:間接的な自己破壊行為に及ぶ場合も-過度の飲酒や喫煙、健康管理を怠る、適切な体重を維持できない、
p193:「泣きなさい」「笑いなさい」「腹をたててもよいのです」と伝えたい。喜怒哀楽の激しい感情が噴き出すことのほうが自然。ありのままの感情を抑えつけることのほうがあとになって問題が生じる。
p204:身内を自殺で亡くした母親に次のような言葉だどれだけ強烈に響くか想像を。「まだ子供がいる」「悲しんだら成仏できない」「早く忘れてしまうことが供養」「いやなことは一日も早く忘れて」善意から相手を励まそうと考えてはなしかけているだけに始末が悪く、こころの傷をさらに広げることも。

・間接的な自殺ということでは、作家、高橋和巳さんがそうだったのかなあ、などと思い出す。また、善意から励ましの言葉が、逆に傷つくというのは、確かに、こういう言葉を受けて悲しかった覚えあり。
・できることできないことを見極めよ、という言葉は、和田秀樹氏もどこかで書いていた、祈りの言葉・先人の知恵なのだろう。
・自殺したいと思ったことがないわけではない、ただ、そういう時に思い出す言葉は、柴田翔の「ノンちゃんの冒険」より、仙人さんの最後の言葉「生きて行くことは恐ろしい、だがそれにもかかわらず、生きて行くことは尊い。・・・みんな、生き続けてくれ。それがぼくの心からの願いだ--。


{図書館から12/15借り1/16読了、記入は1/25}