読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

ネットvsリアルの衝突/佐々木俊尚

Winny金子勇被告の事件からweb2.0の展望、国家戦略と企業活動に巻き込まれる現状を、スピーディに解説してわかりやすい。

p109:サイバースペース独立宣言(1996.2ジョン・ペリー・バーロウ)「われわれはサイバースペースの中に、精神文明を作り上げていくだろう。そしてその文明が、今までおまえたちが作ってきた政府よりもずっと公正で、人間的であることを祈りたい」米独立宣言をまねたこの宣言からは、国家権力の介入に対する激しい反発と怒りが噴出している。
p152:村井純慶応大学教授の「自律分散協調論」で、システムの中にシステムを統治する管理者は存在せず、システムは自立して分散しているサブシステムによって構成され、彼らの協調作業によってシステムの機能は遂行される・・かつてブランドが語り、ジョブズが夢見てバーロウが独立宣言で訴えた理想、その夢を実現し、国家の介入を排除するためにさまざまな活動を行ってきたが、30年の努力の末には、Winnyというパンドラの箱の出現があった。ネットの理想はいまや、無限の悪意が満ちた空間と国家権力の介入の間で押しつぶされそうになっている。
p168:テキサス・インスルメンツの1995年50人の幹部が1週間ホテルで缶詰になり徹底的に討論しmDSPを核としてデジタルネットワーク社会に貢献しながら利益の高い会社になっていくという3行の戦略をたてた。長期戦略の必要性。
p188:半導体で米台、米韓連合に敗れたのが第一の敗戦、ウィンテル帝国にTRON標準化できない第2の敗戦だった。
p231:グーグルに中国は検索制限、アメリカは軍事基地の写真削除など、国家の囲い込みが急速に進む
p250:日本の家電メーカーが勝負しようとした情報家電の世界は、iPodに呑み込まれる。強みは圧倒的な普及率、ソフト、販売サイトをおさえる。放送電波やケーブルテレビ、衛星放送、インターネット回線などと並ぶ新たなメディアになる可能性。「ポッドキャスティング」機能=ラジオ番組など音声・映像ファイルを配信する。ソフトが定期的に更新情報をチェックして中身が新しくなっていると自動的にダウンロードできる。たとえば毎朝新しいニュースを提供する曲を登録しておけば、ダウンロードして通勤中に新しいニュースを見たり聞いたりできるようになる。
p261:web2.0概念の中心は、「すべてをオープンにしていこう」90年代は企業や国家が情報を垂れ流すだけだったが、2002年ごろからブロードバンドの普及にともない、ブログやSNS、検索マーケッティングなどで、双方向性を存分に生かした個人-個人、企業-個人を結ぶ新たなサービスが次々と誕生してきた。すべての情報がフラットにつながり、その「つながり」から集合知や新たな出会いによるビジネスの出現へとつながっていく。多様性をいかしながらも同じ地平にフラットにつながるという「王政復古」マクルーハンが「グローバルビレッジ」という概念で夢想し、バーロウが宣言で語った理想世界。
p262:理想の体現は、ウェブ2.0の世論形成機能。ネットが双方向になったことで、力を持つ。
p269:ネットに世論と呼ぶべき様な空気が出現し、それがリアルの社会とダイレクトにつながるようになった。「論壇」の形成。
p270:膨大なネットの海から浮かび上がった言論が、政治や社会を動かす時代がやってきた。そのプラットフォームを握ろうとしているのがグーグル。人々の情報発信を手助けし、企業や政府などの強力な権力と同じ土俵に上がらせようとしている。しかし一方で、新しい秩序の中ですべてをつかさどる「司祭」になろうとしている。誰が最終的に射止めるかの戦いが始まろうとしている。
p277:法政大学/廣瀬克哉教授の3つの将来シナリオ:「民主化」「アナーキー化」「覇権化」、ネットの世界の基盤が社会に浸透していくのか、それとも国家の覇権が復活するのか、それとも調和していくのか、選択肢をつきつけられつつあるように思える。



{図書館から7/22借り8/6読了}