- 作者: 池井戸潤
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/11/15
- メディア: 文庫
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談合と恋愛模様を絡ませながら、最後の決着にいたるまでスリリングで、主人公の“平太”に感情移入しながら、楽しませていただいた。
談合の“天皇”、三橋顧問は、本来は社会的には許されない存在なのだろうが、本人も自覚しつつ、主人公の平太に語る言葉には重みがあり、印象に残る。平太の母に幼い頃、りんご畑の苗を渡すエピソードなどは、胸にジーンとくるものがあった。三橋の言葉から共感した言葉を備忘録として引用p316
「人間であることを忘れたサラリーマンは、つまらない部品になってしまう。部品から人間に戻れなくなった者にとって、人生はただ不毛な瓦礫だ。そしてそういう部品は往々にして腐る。ネジを想像してみるといい。巨大な鉄橋はネジという部品で支えられる。そのネジが腐ってしまったら、はたしてどうなるか。実は、この世の中で、規格通りの部品で在り続けることは意外に難しい。その規格に満足できない部品は抜けてしまうし、逆に与えられた企画を誤解した部品は、本来の機能を果たさなくなる」
また、平太が付き合っていた女性、萌さんが、結婚を迫られた職場の同僚の家にあいさつにいき、母から言われた言葉p556「自分がおもしろいと思える仕事は大事にしたほうがいいわよ、萌さん。それもひとつの出会いだから」「人生なってあっという間よ」にも、示唆することがあって、印象に残った。
これまでに読んでこの読書録にあるのは、以下6冊だが、著者の作品は、全部読みたいものだと改めて感じた。
2016-02-23 『不祥事』
2016-01-05 『ようこそ、わが家へ』
2015-12-31 『下町ロケット2 ガウディ計画』
2015-11-27 『下町ロケット』
2015-03-27 『銀翼のイカロス』
2015-01-16 『ロスジェネの逆襲』
発刊した講談社系のサイト→ http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062770972
文庫版の村上貴史氏の解説で、文学賞の受賞作家分析があって、まだまだ知らない、読んでいないけど面白い本はたくさんあるんだろうとも感じたので、その部分もメモ。
◇江戸川乱歩賞と吉川英治文学新人賞のダブルは著者が7人目
・栗本薫、岡嶋二人、★高橋克彦、真保裕一、野沢尚、福井晴敏、
◇江戸川乱歩賞と直木賞のダブル受賞も7人目
・多岐川恭、陳舜臣、★高橋克彦、東野圭吾、桐野夏生、藤原伊織
→三賞を受賞したのは、著者と高橋克彦のみ:高橋作品は『写楽殺人事件』1983年を読んだような気がするが、他にはあまり接してこなかったような気もするので、改めて何か読んでみたいもの。受賞は、『緋い記憶』が直木賞とのこと。
{2017/6/22-30読了、記入は7/1}