読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

しんがりの思想

このところ、わかりやすい実用書を多く読んでいたためか、正直、読むのに時間がかかり、どこまで理解できたのかも自信がない。本著の帯の記載『「自由」と「責任」の新しいかたち』と、カバーにある『縮小社会・日本に必要なのは強いリーダーではない。求められているのは、つねに人びとを後ろから支えていける人であり、いつでもその役割を担えるよう誰もが準備しておくことである。新しい市民のかたちを考える』ということが、要旨なのだろうとは思う。


ラストの方P215に、
しんがり」の務め、そして「押し返し」のアクション。これらを貫いているのは、「応える用意がある」という意味でのリスポンシビリティの感覚であり、「気前がいい」という意味でのリベラリティの感覚である。そのためにどんな準備をしておいたらいいのか。
と問題提起をしたあと、梅棹忠夫氏の最後のインタビューを引用して、これからの社会ではフォロワーシップが重要で、いざ担がれたときは引き受けられる準備をしておくこととして、「請われれば一差し舞える人物になれ」という言葉で、本著を結んでいる。あとがきには、この末尾の言葉に、さまざまな思いが収束すると確信したと紹介しているので、これも重要なポイントだということか。


なお、「しんがりの思想」については、P140に「しんがり」の説明があり、『(縮小社会で)最後尾でみなの安否を確認しつつ進む登山グループの「しんがり」のような存在、退却戦で敵のいちばん近くにいて、味方の安全を確認してから最後に引き上げるような「しんがり」の判断が、もっとも重要になってくる』としている。


出版したKADOKAWAのサイト⇒ http://www.kadokawa.co.jp/product/321502000048/


◇P40で、朝ドラ「カーネーション」の視聴率が関西より関東の方が高かったことに触れ(P40)、敗戦の日に「さ、お昼にしょうけ」というヒロインの言葉に、破局の中でしぶとく生き延びる算段を考えるドラマの芯だと考え、震災の半年後、東日本で熱い支持を受けたのは非常時を潜り抜けて生き延びる覚悟と重ねて考察している。ただ、現在放送中の「あさが来た」も関東の方が視聴率が高いようで、この事象をとらえた思考の巡らせ方は、どう受け止めたらよいのかを考えさせられた。


◇著者がワークライフバランスという言葉に、ワークとライフを対立させていることにひっかかるのは、この読書録でも何度か触れてきたが共感するところがある、なお、著者は、今の時代、ワークも私益で働き、「ワークもライフともに「私的」な性格しか持ちえなくなっている(P87)」ことが問題で、私生活に意識を注ぎ、公共的なことは「お上」にまかせる傾向として、サービス社会の中での「市民性の喪失」を、大きな課題として捉えている。カントの「理性の公的使用p110」の考え方を紹介し、NPO活動に詳しい加藤哲夫氏を引用しながら、「公共的な議論の場づくり」に取り組むべき、という主張は、以前読んだ『アル・ゴア 未来を語る』 http://d.hatena.ne.jp/MrBooPapa/20141223 「最優先すべきは、私たちが行わなければならない難しい選択に関して、広く利用しやすい公開討論の場で、率直にわかりやすく互いにコミュニケーションをとり合う能力を回復することだ」という指摘にもつながる印象を受けた。


◇教育現場で事件が起これば、オウム返しに「早急にスクール・カウンセラーにお願いしなければならない」とする対応について、著者がすぐにプロに委託することを批判している(P122)が、確かに、リスク管理上はあっても、どことなく違和感を感じるのはそういうことかと感じた。


パナソニックの社員から聞いた話として、松下幸之助が管理職を集めて、リーダーとして備わっていなければならない3つの条件として、「愛嬌」「運が強そうなこと」「後ろ姿」を備えた人が成功する(P150)ということを著者なりに分析しているところも興味深かった。確かに、「上司の命を待つのではなく、一人ひとりがじぶんで考え、タフに行動する組織がいちばん活力がある(P152)」というのは、その通りだろう。


{11/7-21読了、記入は21}