読書録

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永遠のとなり

永遠のとなり (文春文庫)

永遠のとなり (文春文庫)

青野精一郎という主人公が、大手損保に入りながら企業合併で仕事が厳しくなってうつ病になり、故郷福岡に戻って、癌と戦う親友の津田敦と関わる中で、再び生きる意味をつかみなおしていく、というストーリーだろうか。

この作者の作品を読むのは、今回が初めてだが、「生きる意味」を考えるうえで、胸にせまるものがあった。

p213:人間は誰だって、自分が幸せになるだけで精一杯なんよ。(中略)わしは最近、大事なんは生きとるちゅうことだけで、幸せなんてグリコのおまけみたいなもんやと思うとる。あった方がよかけどないならないでも別に構わんとよ。

P134:私たちの欲望は次々と細切れにされ、その細切れごとに過剰なまでのサービスが用意され、充足させられていく。その一方で、もっと大きくて曖昧で分別のできない大切な欲望、たとえば、のんびり自然と共に生きたいだとか、家族仲良く暮らしたいだとか、本当に困ったときは誰かに助けてもらいたいだとか、病気をしたらゆっくり休みたいだとか、ひとりぼっちで死にたくないだとか、必要以上に他人と競いたくないだとか、そういった水や空気のように不可欠な欲望はどんどん満たされなくなっている。

こうした言葉に共感するのは、今の生活がなかなか厳しいからなのだろうか。本当に「家族仲良く暮らしたい」ということ事態が、なぜ、なかなか許されないのだろうか。

この本の主人公のように、親友と呼べる奴がいて、どこかでつながりを感じて再生できていくというのは、とても羨ましくも思う。転校を何度も繰り返し、溶け込むためにどこか演技をしてきたように思う自分には、誰か親友がいるかと自問すれば、いないような気がする。「親友」がいないと救われないのか、と、そこは少し寂しくもなる。

この本を読んでいたら、なんとなく、風の「あいつ」や「君と歩いた青春」を久しぶりに聞きたくなってCDをかけ、昔のことを振り返ったりする。

{8/25−9/9読了、記入は9/16}