読書録

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『失敗学実践講義』 畑村洋太郎 著

失敗学実践講義 文庫増補版 (講談社文庫)

失敗学実践講義 文庫増補版 (講談社文庫)

失敗を、原因、行動、結果の三つを検討するにあたって、それぞれ「まんだら」という図を作り、そこにそれぞれ10のキーフレーズをつけて分析。

これを、六本木ヒルズの大型回転ドア事故、日本航空のトラブル、JR福知山線脱線事故、金融システムの失敗、リコール隠し、火災、JCO臨界事故、ロケットの打ち上げ失敗、という具体的事例をもとに解説している。

また調査にあたっての基本的な考え方として、「三現」という、現地に出かけて、現物を自分の目で見て、現人に会って話を聞くことが大切だとし、これに「個の独立」という自分で考え決め行動することによって、正しいものの見方を確立すべきと主張しているが、これは極めて重要なことだと思う。

印象に残った教訓
p50:同じ事故が繰り返される「30年の法則」
p98:人間の注意力や集中力には限界があるから・・・「いい加減にやる」のが解決策
p103:(マニュアルに書いてあること以外をしなくなり、考えることをやめるのが問題。意味や何故作られたのかということを忘れる)
p153:トータル設計の考え方→一度全部捨ててから本当にいるものを拾い出す
p170:バカと専門家は細かいところが気になる
p225:考えの壁が存在、起こったら考えいようという直列・逐次思考から、仮想演習による並列思考で対応を
p247:一度起こった大事故を当事者の胸の内だけに納めるのではなく、社会の共有財産として社会全体が積極的にとらえる必要がある
p312:JALへの提言→企業風土の改革を支えるには4つの文化が必要→1.自ら意思決定し挑戦する、2.コミュニケーションをする、3.マニュアルを磨いていく、4.2.5人称の視点を持つ(自分や家族が乗客だったらby柳田邦男)
p326:仕事を通じて社会とどう関わっていくかは、顧客だけでなく、金を払っていない人も含めた関係が重要

ブラックスワンという本も思い出した。何が起こるかわからない今、著者が唱えるように「危険学」という分野は必要で、社会的な知見を深めていくしか無いのかも知れない。