読書録

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『JR上野駅公園口』 柳 美里 著

  本著の翻訳本『TOKYO UENO STATION』が、2020年の全米図書賞(National Book Award 翻訳文学部門)を受賞(11月)したことで注目された本著を、連れ合いから借りて、ようやく読む。

JR上野駅公園口 (河出文庫)

JR上野駅公園口 (河出文庫)

 

発刊した河出書房新社のサイトに著者のあとがきあり↓

web.kawade.co.jp

 あとがきで書かれている「多くの人々が、希望のレンズを通して六年後の東京オリンピックを見ているからこそ、わたしはそのレンズではピントが合わないものを見てしまいます。
「感動」や「熱狂」の後先を──。」という部分については、コロナ禍がなかなか収束せず、ワクチン接種も進まない中で、逆にクローズアップされるのかも知れない。本著でもp169「二者の痛苦を繋げる蝶番のような小説を書きたい」とある。

 読後感としては、とても苦しく、悲しい。アカデミー賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』を見たような印象も。出稼ぎから戻って、妻がいきなり亡くなり、孫娘に迷惑をかけたくないと東京に出てホームレスに・・・ラストも時系列・場所的にどうもよくわからないのだが、津波が描写され、悲劇的な話が待ち受けていた。

 主人公の男性は、山手線のホームからどうなったのか・・・も気になる。

 

 印象に残った部分をいくつか引用↓悲しかったのは、p119の隣で寝ていた妻の死・・

p47:(時忘れじの塔:インテリのシゲちゃんの話)僅か2時間ほどで、十万人もの命を奪ったというのに、都内には公立の東京大空襲・戦災記念館は一つもなく、広島と長崎にある平和公園もないのです

p81:だが、この公園で暮らしている大半は、もう誰かのために稼ぐ必要のない者だ。

p103:死ねば、死んだ人と再会できるものと思っていた。…死ねば、何かが解るのだ思っていた。その瞬間、生きている意味や死んでいく意味が見えるのだと思っていた、霧が晴れるようにはっきりとー


 本著では、幸せとは何かを考えさせられるが、読了したきょう、毎日新聞の朝刊で、悲しいことを乗り越え、覚えておきたい記事があったので、記録に合わせてメモ。

mainichi.jp

 記事で紹介されているのは↓

www.harpercollins.co.jp

 有料記事の部分ではあるのだが、この著者によれば、人間が本能的に持っているいくつかの欲求を満たせば、幸福感を得ることができ、人生に意味を感じることもできるという。その欲求とは、以下。

1)自分で人生を選択し、人生を作り上げる自律への欲求、

2)自分に自信を持つ能力への欲求

3)親密な関係性への欲求 

さらに他人に対していいことをする「慈善の欲求」をくわえることができるという


 この読書録でも何度か紹介してきた、小澤竹俊氏の「人を支える3つの柱として、「将来の夢」(時間の柱)、「大切な人との関係」(関係の柱)、「自分の自由」(自律の柱)の3つ」を思い起こす。小澤氏の関連本は↓でまとめ 

mrboopapa.hatenablog.com

  こちらでも関連の引用や紹介があった↓ 

mrboopapa.hatenablog.com

  どうにもならない事態のなかで、どう考えながら生きていけば良いのだろうか、と改めて考えさせられた。

{2021/5/20-21(金)読了、記入も同日}