ドラマや映画では観てきたが、本で登場するのは初めての著者の作品で、未完の遺作となった本著。綿密な取材で、シノプシスが掲載されている第二部「ハワイ編」で、主人公の花巻朔太郎がたどる父の足跡は、ぜひ読みたかった。
発刊した新潮社のサイト↓
著者は執筆にあたってp347~、で、戦争という悲劇を二度と起こしてはいけないと言う気持ちのもと、真珠湾攻撃で特殊潜航艇にのって捕虜となり、生き延びて波乱の人生を歩んだ人物を描くことを構想し、昔話にしないため、「小説を書く限り、現代性、国際性をもったものでなくでなくては」と悩み続けたという。そして、専門家が現代の日本周辺海域をめぐる状況について語っている際に、海上自衛隊の潜水艦を調べて、「戦争をしないための軍隊」を追究してみたくなって書いたという。
なだしお事件をモチーフにしているが、著者の思いなのか、いくつか引用↓
p169:「自衛隊を叩けば、正義の味方かインテリとでもおもっているのでしょうか」
p187:「マスコミって一体、何だろうと混乱しつつも、本当のことを知りたいと言う思いが、胸の底からふつふつと湧いてきた」
また、シノプシスで第二部の終わり、親子旅行で父が語る言葉が、心に響いた。
p369:「そうだ、この日本の海を、二度と戦場にしてはならないのだ。それが俺とお前だけの約束にならぬように、信念を貫き通せ」
本著を読んだのも、関係者から、戦後75執念祈念出版 復刻版合本 改訂版
真珠湾攻撃 捕虜第一号『酒巻和男の手記』(発行・編集 青木 弘亘 / 監修・校訂 田辺健二) をいただき、読み進めて、本著とのことに気づいたからで、捕虜第一号となった酒巻和男氏が、なかなかな体験をしていたことを知った。 合本には、↓と、アマゾンや楽天にはないが、『俘虜生活四ヶ年の回顧』があり、読み応えあった。
{2021/3/1-3読了、記入は3/7(日)}