読書録

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ブラック企業

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

タイトルの言葉は、ネットで広がり、映画『ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない』(2009年)で人口に膾炙するようになったp21と著者は紹介する。経済雇用情勢の厳しさが続く中で、大量採用して使える人材だけを選別するということが可能な今の時代、ここで紹介されているようなやり方が続けば、パワハラ長時間労働によって若者の間でうつ病が蔓延すれば医療費負担が増大するとして、「若者の未来を奪い、さらには少子化を引き起こす。これは日本の社会保障や税制を根幹から揺るがす問題である。同時に、ブラック企業は、消費者の安全を脅かし、社会の技術水準にも影響を与えるp243」恐れがあり、なんとかしていかないといけないという問題意識を持つ。


本著で紹介されているのは、匿名が2社(IT企業ー徹底的な従属とハラスメント、衣料品販売ー店長プレッシャーと選別)あるが、経済関係者によると、それぞれ超有名企業で代表者はよくテレビにも出演し、ある意味、今の時代のモデルとも言われるような会社なだけに、ここに記されていることが事実とすると、創業者や成功している社員は当たり前のことと思うのかもしれないが、一般感覚としては、あまりに厳しいように感じる。著者が言うように、「普通の人が生きていけるモデル(p233)が求められているのかも知れない。


また、実名があげられている4社、<気象会社が入社後半年の「予選」で選別、外食大手は残業しなければ得られない誇張された月収、外食チェーン大手は過労を生み出す長時間労働、コンビニの名ばかり店長で残業代なし>については、自殺者や係争事案になって紹介されているのかと想定されるが、いずれも名を知られた企業だ。


著者は、ブラック企業のパターンとして、p80に表を示している。
{動機}   {パターン}
大量の募集 1月収を誇張する裏ワザ
      2「正社員」という偽装
?選別   3入社後も続くシューカツ
      4戦略的パワハラ
?使い捨て 5残業代を払わない
      6異常な36協定と長時間労働
      7辞めさせない
?無秩序  8職場崩壊

こうした手法に共通するのは、努力しても何をしても罵られて絶え間なく否定されるようになりp38、人格的に破壊させられて、自ら自己都合退職に追い込むp41ところで、背景には、「代わりはいくらでもいる」という取り換えのきく「在庫」としての資源があるから。
そして、この辞めさせる技術が高度になってきたとして、p114〜
1.抽象的な目標管理を行い自己反省を繰り返させる『カウンセリング方式』
2.『特殊な待遇の付与』として辞めるための役職や正社員として最後のチャンスで非正規になどさまざま
3.過剰なノルマを課すケースである『ノルマと選択』をあげ、最近は「ソフトな勧奨退職」に進化したという。


こうしたブラック企業に対処する基本的な考え方として、5点を紹介している。
1.自分が悪いとは思わない
2.会社のいうことは疑ってかかれ
3.簡単にあきらめない
4.労働法を活用せよ
5.専門家を活用せよ


1995年(H7)に旧日経連が出した報告書では、日本型労使関係を高コストだとして流動性をめざし、従来型の正社員である「長期蓄積能力活用型」に加え、「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」という考え方を提示したが(p220)、本著で書かれているようなブラック企業が広がるようでは、労働雇用法制を含め、何らかの見直しが必要になると思われる。

{6/6-12読了、記入は22}