読書録

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『壊れる男たち』 金子雅臣 著

壊れる男たち―セクハラはなぜ繰り返されるのか (岩波新書)

壊れる男たち―セクハラはなぜ繰り返されるのか (岩波新書)

東京都の労働相談にあたってきた著者の紹介する事例はナマナマしく、セクハラはいまや「男性問題」という視点もよくわかった。


p14:女性の職場進出や中高年管理職リストラ、年功序列や終身雇用の崩壊、そして能力主義管理の進展などは、これまでの男性中心主義を周辺から掘り崩している。こうした中で、・・現れるケースは、男性たちが自明のものとして依拠してきたスタンダードそのものを問い直しているのだと言える。


p69:繰り返される事件を見ていると、ある種の権限を持っていたり、それなりの立場にある加害者男性が、その権限や立場に慣れすぎてあまりにも自覚がないと思われることが多い。いや、それ以上に、男性としての優位性に慣れすぎてしまっていると思われることもある。だから平気で相手の意思を無視したり、被害者女性が拒否することのできない弱い立場にあるということも、同じように忘れてしまっている。


p122:「オンナとは気まぐれで嘘つきで、男によって変わる。本当は合意だったのだが、何か理由があって違うことを言っているに決まっている。本心はわからないよ」などという主張である。本当にそうなのだろうか。


p190:男の発想によって都合よく作り上げられたこんな考え方を、何の根拠もなく信じ切っている男たちが多い。「イヤよ、イヤよも好きのうち」「女性の抵抗はある種のポーズである」などというものから、「女は潜在的に強姦願望がある」「女は一回やってしまえば意のままになる」などというとんでもないものまで、男たちが身勝手に信じ込んでいる迷信には根深いものがある。


p197:男性の意識改革の必要性に気づくかどうかが、する男としない男の分かれ目になる。・・男というものは、性的にだらしなく理性のカケラもない動物であることを受け入れ、肯定するのかどうからはじまる。・・セクハラを「男性問題」として受け止め、その衝動についての説明責任を真剣に考えることによって、する男の呪縛は解ける。

p198:性的なトラブルなどに現れる男たちが、著しく他者への共感能力を欠いているとい問題である。・・セクハラ事件の主役たちは、相手の立場をわかろうとしない共感性を欠いた男たちだと言っていい。こうした男たちには、一人よがりな男性優位の発想が抜きがたくしっかりと根をおろしている。

p199〜:男たちの受け止め方で3つのグループ:1.絶えず女性に対して性的関心を向けることに慣れてしまっている男性たち。2.「職場でも女はオンナ、男はオトコ」という区分にとらわれているグループ。3職場の女性を性的な対象とまでは思わないにしても、「女は家庭を守って子どもを育てるのが一番幸せなはず」などと素直に思っている男たち。


p210:結論を先回りして言えば、職場で加害者をパワハラやセクハラに駆りてたるものの正体は、男たちが抱えた危機感と閉塞感である。言い方を換えれば、男たちが置かれた状況の不安定さや、そこから生まれる将来に向けての不安定やいらだちの裏返しである。

218:スタートラインのハードルの低さと、その結果の重大里のギャップの大きさ:ギャップは男たちの意識に長年住み着いた「ジェンダーの呪縛」によって生み出されたもの。

{フォーラムより5/31借り6/17読了、記入は27にタイトルのみ、6/29追記}